2026.2 KENDOJIDAI
「緊張よりも楽しさの方が勝っていた」と語った大嶋選手。
2025年11月3日、全日本女子選手権決勝の舞台に初めて立つことができた。
「挑戦者としての気持ち」が、大嶋選手の心を奮い立たせたという。
大嶋 友莉亜
おおしま・ゆりあ/平成13年愛知県名古屋市生まれ、24歳。久田剣道場で竹刀を握る。中村学園女子高から鹿屋体育大に進み、卒業後大阪府警察に奉職。高校時代ではインターハイ団体3連覇に貢献。鹿屋体育大では全日本女子学生大会団体優勝など。大阪府警奉職後は国スポ佐賀準優勝、全国警察大会団体準優勝など。4回目の出場となった第64回全日本女子選手権で躍進の決勝進出を果たす。剣道四段
両親にいつか優勝する姿を見せたい
「緊張よりも楽しさの方が勝っていたんです。いままでとは違う感覚でした」
2025年の全日本女子選手権。4回目の出場で初の決勝進出を果たした大嶋友莉亜選手。並みいる強豪を退け、「大阪・大嶋」の名前が皆に印象付けられた日だった。
「初めて出場した時は、1回戦負け。2回目は2回戦負け。3回目は3回戦負け。今回は4回目なので、最終的な目標は優勝ですが『準々決勝以上』というひとつの目安はありました。結果は、ひとつ飛んで決勝進出。皆がそこまでいくとは思っていなかったと思います」
その言葉を吐いた時、照れた表情を見せた。本当にそうだろうか。周囲の方々はきっと大嶋選手の飛躍を信じていたに違いない。たとえば、当日会場まで足を運んでいた両親の存在。
「私は5人きょうだいです。妹たちも剣道をしているのでなかなか私の試合を見せる機会がなかったのですが、今回は来てくれて、すごくうれしくて」
いつもは両親を気遣い「妹の方に行ってやって欲しい」と言っているという。忙しい中東京に来てくれた両親。良い所を見せるしかないではないか。
「試合前日、父・真治から『お前は何もないんだから、思い切って鼻水垂らして、格好悪くてもいいから必死に一本を取る姿が見たい』という言葉をもらってから、不思議と肩の荷が下りたと言いますか……」
少し強めの、しかし愛情にあふれた激励。頑張るしかない、と思った。
「父の言葉のおかげか、今回は1試合1試合、集中することができました。緊張はあるのですが、緊張よりも楽しさの方が勝っていました」
過去の個人戦の試合では、「思い切った試合ができず、どこか自信を持てていなかった」という。それが、今回は緒戦から試合を重ねる度に楽しさが増していった。父の言葉が背中を押してくれていた。
準決勝では、高校・大学の先輩にあたる妹尾舞香選手との対戦となった。本大会を制したこともある若手の筆頭株。「まさか同じ舞台で戦えるとは思いませんでした。準々決勝が始まる前、『私が負けたら、友莉亜まで悪い流れになったらいかんから、私絶対勝つから友莉亜も上がってきな』と言われて、本当に勝って、私も力をもらいました。私の準々決勝が終わった後、グータッチをしてくれて。(こんなに素晴らしい先輩と試合ができるからこそ)胸を借りて思い切りぶつかるだけでした」
防御も攻めも強いと定評のある選手。「足を止めたら終わる」と感じたという。
「勝負ができる場面は限られています。下手に攻めればかえされるし、(勝負に)いかなくても攻められて打たれるので、すごく難しい間合だったのですが、腹を決めて(面に)いけたのは自信につながりました」
試合終盤、攻め合いの中、機と見た大嶋選手が本領発揮の面で一本。会場がうなった。
初めての決勝。相手は高橋選手(神奈川県警)。世界大会団体優勝4回の強豪に対しても、大嶋選手の剣道は変わらなかった。
「攻めていこうとしたのですが、崩し方が甘かったのでしょう。部位を捉えることはできませんでした。もっと崩していけば、また展開は違ったかもしれません。
(打たれたところは)相手の経験が上だったのかなと思います」
攻めの剣道は崩さなかったが、間隙を突かれ試合中盤に引き面を打たれた。自分の経験不足、まだ個人タイトルを獲ったことがないこと、様々な思いも去来するが手ごたえもある。現在、第1回アジア・オセアニア大会(来年開催)、第20回世界大会(再来年開催)への選考真っ最中。各種警察大会も控えている。それらの大会を目指して突っ走るのみだ。「両親に優勝する姿を見せたかったのでその点は残念ですが、また来年、再来年も、悔しさがあるからこそ頑張れます」
もっと上へ、上へ。大嶋選手の見つめる先は、頂点のみだ。
高校時代の悔しさが次の道を切り開いた
残りの記事は 剣道時代インターナショナル 有料会員の方のみご覧いただけます





No Comments