2020.7 KENDOJIDAI
「打突の基礎を習得するのが素振りです。相手に操られず、崩れずに『ここだ!』という機会に捨て身で打つには、素振りでしっかりとした土台をつくることが大切です」と門野教士は強調する。打突動作の原型がすり足による素振りであることが意識できれば、素振りの質がきっと変わる。
門野政人教士八段
かどの・まさと/昭和40年千葉県生まれ。野田北高(現・野田中央高)から、開学したばかりの国際武道大学(一期生)に進学する。卒業後は教員の道に進み、現在は城北中・高等学校で教鞭を執る。
国際武道大学 小森園正雄先生が重視したすり足の面打ち
剣道は相手と向き合い、攻防の中で隙をとらえ合うものです。相手がいるから稽古や試合ができ、自分勝手な剣道をしていても評価されないのは周知の通りです。ただ、自分勝手な剣道では評価されませんが、相手に操られ、遣われてしまう剣道では、勝利を得ることができません。
相手の心境を感じ取り、強い攻めで相手を動かし、機会を捉える剣道が求められると考えていますが、そのためには自分が崩れず、 「ここだ!」と感じたところで躊躇なく技を出すことができる土台をつくっておかなければなりません。その土台づくりに有益なのが素振りです。いま対人での稽古ができなくなっていますが、あらためて「剣道とはなにか」を考える良い機会をあたえていただいたと考えています。
そしておかれた環境下でできることはなにかと考えたとき、実施できるのは素振りです。素振りは、太刀さばきを体得するために大変重要な稽古法であり、太刀と身体の一体的な遣い方を身に付ける、打突につながる太刀筋を覚える、打突の手の内を覚えるなどの目的がありますが、質の高い素振りをするには、打突動作(踏み込み足)の原型が「すり足による素振り」にあることを意識することではないかと考えています。素振りの中で有効打突を意識し、地稽古でも素振りのように相手を打つことを心がけることで、崩れの少ない腰始動の打ち方が身につくと考えています。
踏み込み足での打突は、打突部位をとらえた瞬間は左足が残っており、その後、できるだけ早く左足を引きつけます。一方、すり足の素振りは竹刀が止まるのと同時に左足を引きつけます。このような違いはありますが、素振りで左足をしっかりと引きつける感覚を身につけると、踏み込み足の打突時、すばやく左足を引きつけることができ、身体の収まりがよくなり、打突に冴えが生まれます。
私は国際武道大学の一期生として入学し、主任教授小森園正雄先生(範士九段)からご指導をいただくことになりました。小森園先生の指導は基本が中心であり、1年時は対外試合もせず、とにかくすり足からの面打ちを叩き込まれた覚えがあります。高校を卒業したばかりの私には、なぜ、踏み込み足ではなく、すり足なのか、なかなか理解できませんでしたが、いま振り返れば、打突動作の原点はすり足による素振りであり、面打ちだったのです。
素振りを繰り返すことで正しい重心移動を身につけ、その重心移動から踏み込み足を用いて一挙動で打ち切ることができれば、だれもが評価する一本になると考えています。
残りの記事は 剣道時代インターナショナル 有料会員の方のみご覧いただけます
No Comments