日本剣道形 稽古方法

岩立三郎日本剣道形の学び方

2020年9月7日

2020.8 KENDOJIDAI

なぞるだけでは意味がない、真似るだけでは意味がない。わたしたちはなんのために日本剣道形を学ぶのか。日本剣道形の正しい学び方とその意義を考える。

矢野博志範士

やの・ひろし/昭和16年静岡県生まれ。相良高校から国士舘大学に進み、卒業後、同大学に助手として勤務する。昭和61年より同大学教授となり、平成23年に退職する。主な戦績として世界選手権大会2位、明治村剣道大会3位、沖縄県立武道館落成記念全国剣道八段大会3位、全国教職員大会優勝などがある。現在、国士舘大学名誉教授、全日本剣道連盟審議員。剣道範士八段。

日本剣道形の一人稽古
終始充実した気迫で行なうこと

新型コロナウイルス拡大の影響で私が館長をつとめる松風館も休館を余儀なくされています。定例の稽古は3月から中止にしていますのでかれこれ4ヶ月が経とうとしています。これほど稽古から離れたのは剣道を始めて以来、初めての経験ですが、道場は換気の必要もあり、定期的に足を運んで空気を入れ替えています。道場に行ったときは素足で床板の上を歩いたり、足さばきの稽古をしたり、素振りもしています。

そして今、取り組んでいるのは形稽古です。対人での稽古ができない今、日本剣道形を稽古することがまたとない機会です。大日本武徳会武道専門学校主任教授をつとめた小川金之助先生(範士十段)は『改訂帝国剣道教本』 (昭和12年刊行)で剣道形の効果を次のように記しています。

―この大日本帝国剣道形は精髄中の精髄ともいうべき技術の基本で、実地における試合動作の千変万化、縦横無礙の術も、実にこの形の連関動作に過ぎない。すなわちこれによって正しき技術の根本法則を習得し得るのみならず、形は稽古によって起こる種々の悪い技癖・太刀筋・姿勢・態度を正し、動作・激突をいっそう敏捷適確にし、かつ眼を明らかにして激突の機会を知り、間合を知り、気位を高め、気分を練るなど、剣道修行上きわめて効果の大なるものである。

日本剣道形を修錬する意義は難しく言えば「刀法の原理」「攻防の理合」「作法の規範」を理解・習得することと言えると思いますが、日本の芸事は形文化です。決められた型を覚えて、反復練習しながら形へ移行していくことが大事です。

『剣道講習会資料』の日本剣道形講習における「重点事項」として、左記の5項目をあげています。一、立会前後の作法、立会の所作、刀の取り扱い。二、正しい刀(木刀)の操作(刃筋、手の内、鎬の使い方、一拍子の打突など)や体さばき。三、打太刀、仕太刀の関係を理解し、呼吸を合わせ、原則として仕太刀が打太刀より先に動作を起こさないこと。四、打太刀は間合に接したとき、機を捉えて打突部位を正しく打突し、仕太刀は勝機を逃すことなく打突部で打突部位を正確に打突すること。五、形の実施中は、目付け、呼吸法、残心などを心得て気分を緩めることなく終始充実した気迫で行なうこと。一人稽古で日本剣道形を行なうときも、これらの重点項目を頭に入れて取り組むことが大切です。

真剣味の考え方:終始充実した気分で行なう

六段、七段審査の日本剣道形の審査員を務めさせていただいていました。六段以上は全剣連が認めた立派な高段者です。剣道形も正しく身につけ次世代に正しく継承し、伝える立場であるのですが、絶対的な稽古量が不足しています。しかも形審査は再受審が許されているにもかかわらず、その再受審者が満足にできていません。



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