2018.7 KENDOJIDAI
足を見直すきっかけとなったのは、日の丸を背負った大一番での敗戦だった。「相手の攻めをさばく足と一本をとりにいく足を意識して稽古に取り組んだ結果、剣道の幅が広がった」と木和田大起教士。木和田教士が実際に感じた足と有効打突の密接な関係について聞いた―。
木和田大起(きわだ・だいき)教士七段
昭和53年生まれ、三重県出身。三重高校から中央大学へと進学し、卒業後、大阪府警に奉職する。第60回全日本選手権大会優勝をはじめ、世界選手権大会団体優勝、全国警察大会個人団体優勝など、選手として第一線で活躍する。現在は大阪府警察剣道上席教師として、岸和田署で署員の指導にあたる。
私が足遣いを見直そうと思ったのは、日本代表として出場したイタリアの世界大会がきっかけでした。韓国との決勝戦、2―0でまわってきた大事な副将戦で、私は守り切ることができず二本負けを喫してしまいました。バトンを引き継いだ大将の髙鍋進選手が、有利な状況下で冷静に足を使った剣道を実践しているのを見て、足の重要性、必要性を痛感しました。
それから私は、その年の全日本選手権優勝を一つの目標とし、足遣いの改良に取り組みました。期間はわずか半年ほどでしたが、今振り返っても、あの時間は自分にとってとても有意義なものだったと感じています。
相手の攻めをさばく足
技を受けずに空を切らせる
半年の間に私がまず取り組んだのは、どのようにして一本を守り切るか、ということでした。警察大会などでは年齢的にも副将や大将を任されるころでしたので、韓国戦と同じような状況が起こりうるかもしれない、そのときのためにまずは守りを勉強しようと思いました。
守りに注目して当時の自分を振り返ってみると、相手の技に対して足をつかってさばくということはほとんどなかったと思います。竹刀で防御をする、もしくは上背をいかして上体だけで避けようとしていました。韓国戦を経て感じたのは、たとえば手元を上げて竹刀で受ければ一本をとられることはありませんが、自分も攻撃の機会を失うということです。加えて、相手によっては調子に乗ってどんどんと技を出してきますし、手元が上がっている分、通常より打突力が弱くても一本になってしまうおそれがあります。それらを踏まえて、手元を納めた上でどのようにして相手の攻めをさばくかが大事だと思うようになり、足をつかうことについてもっと深く考えるようになりました。
最初は足が良いと言われる先生や選手の動きを取り入れようとしてみましたが、うまくいくはずもなく、自分らしい足のつかい方を試行錯誤する毎日でした。そんななか、たどり着いたのがいわゆるステップを踏むような足遣いです。
ステップというと前後にピョンピョンと跳びはねるようなイメージがありますが、剣道でそれをしてしまうと、空中に浮いている間はまったく攻撃することができません。跳んで着地した瞬間を狙われることもあります。私が実践したのは、攻めるときは細かい足さばきで攻め、間合を切るときは跳ぶようにして下がるというもので、それを繰り返していると、相手はステップを踏んでいると錯覚します。そう思わせるのも作戦の一つでした。
この足遣いを自分のものにしてから、相手の技を竹刀で受けることが減り、空を切らせることができるようになりました。最初は守り切ることを目的に取り組んだ足の改良でしたが、ある程度、体のさばきができるようになると、今度はさばいたところから打突につなげることを考えるようになりました。
一本をとりにいく足
右膝の溜めが生んだ小手技
残りの記事は 剣道時代インターナショナル 有料会員の方のみご覧いただけます
No Comments