2021.2 KENDOJIDAI
米田敏郎
こめだ・としろう/昭和44年熊本県菊池郡大津町生まれ。九州学院中高から中央大に進み、卒業後母校に戻り教鞭を執る。全日本選手権出場、全日本東西対抗大会出場、国体出場、全国教職員大会優勝など。監督としてインターハイ団体優勝8回個人優勝4回、全国高校選抜大会優勝10回、玉竜旗優勝9回など。剣道教士八段
高校3年生たちとの自主練習で自分を見つめ直せた
インターハイ団体優勝・全国中学校大会優勝など、燦然と輝く記録をもつ九州学院中高。この名門を率いる監督、米田敏郎教士が令和2年10月の八段審査において合格した。
「力むことなく、適度な緊張をもち、自然体で自分らしく臨むことができたと思います」
教師として剣道部監督として、毎日忙しい時間を過ごしていたはず。その上で受審をめざしてきたこの数年、どのように過ごしてきたのだろうか。
「今回で9回目の受審でした。1回、2回と挑戦し続ける中、亀井徹先生はじめ多くの先生方からアドバイスをいただき、また、自分でも試行錯誤をくり返してきました。しかし、なかなか合格をいただけず、周囲から色々とご配慮いただいているにも関わらず申し訳なくなることもありました。
『自分の本来の仕事は教員なのだから』という言い訳をしていました」
ジレンマを抱えながら稽古を続けてきた中、今年のある日、一つの転機が訪れた。
「一人稽古をしていた時、(部活を引退していた)高校3年生たちに『何やっているんですか』と問われたんです。なぜ一人で稽古をしているのか、不思議だったのでしょう。そこで、生徒たちに八段審査をめざしていることを初めて伝えて、『審査に向かってやっていい?』と聞いたんです。
そうしたら『オオ~!』という反応(盛り上がっていた)。何人かが私の稽古に付き合ってくれるようになりました」
生徒に挑戦すると宣言し、そして協力もしてくれている。ここで逃げるわけにはいかない。
「部活動が終わったあと、大体4、5人が来てくれて。40分程度の稽古でしょうか。彼らにとっては物足りない時間ですが、それでも来てくれます。だからこそ励まされますし、また、『何かにとらわれ過ぎている自分』に気づかされました」
生徒との稽古で得たものがあったという。
「普段、生徒の指導では良いところを伸ばしながら新しい要素を取り入れさせるように心がけています。では、米田敏郎の良いところは何なのか、と考えた時『できないことをさせても仕方がない。俺の良いところはここだ』という点を心が整理できて、それから段々と気持ちが楽になってきました」
自分を見つめ直すことができた、と語る米田教士。
「同僚の〆先生(一司・米田教士の教え子)がまた一所懸命稽古してくれます。審査も年齢も関係なく、目一杯勝負してくれます。こちらも打たれると悔しさが湧き上がって、さらに気持ちを込めて稽古するので、互いに相乗効果があったと思います」
先生や教え子との稽古で気持ちを一新できた。
今年は新型コロナウイルス流行があり、中学生・高校生たちの最大の目標だったインターハイ等の試合がすべて中止となった。心にぽっかりと穴があいたような状態になったこともあった。
「そのような中で、生徒と一緒に稽古できたのは大きかったと思います。生徒から教えてもらう、と言うと恰好良すぎるかもしれませんが、気づかされたり、何かを感じさせてくれるんですよね。ただ剣道を教える・教わるだけの関係ではありません。彼らのことを信頼していますし、彼らに打たれたら素直に『今のは甘かったな』と反省することもできます」
今までも、そしてこれからも、生徒と共に学び共に歩んでいく。
米田流自己分析
自分を指導する気で観察する
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