2025.10 KENDOJIDAI
構成=寺岡智之
撮影=笹井タカマサ
*本記事に掲載された画像の無断転載・使用を固く禁じます。
4月に開催された全日本都道府県対抗優勝大会において、千葉県の大将として優勝に貢献した鈴木剛教士。「八段といえどもまだ修業の過程。あまり固定観念にとらわれ過ぎず、今の自分にできる剣道を高めていきたい」と信念を語る。鈴木教士の剣道の現在地について、多角度からうかがったー。
鈴木 剛 教士八段

体格で劣ることを理解して
自分の得意な部分で勝負する
4月に出場した全日本都道府県対抗優勝大会で、千葉県の大将として優勝を飾ることができました。同大会には4大会連続で出場しているのですが、ここ数年、私の剣道も少しずつ変化していることを実感しています。
私は今年で53歳になります。一般的には40歳を超えると体力・筋力ともに低下していくといわれ、私も稽古を積んでいるとはいえ、若いころのような動きはできなくなってきました。しかし、体力的な衰えが訪れても、積み重ねた地力と経験で勝負できるのが剣道の良いところでもあります。私は体格的にみれば背も低ければ腕の長さも短いので、自分より体格のよい相手に対してスピードやパワーで勝負をしていては歯が立ちません。そこで意識をしているのが、多彩な技の引き出しを持っておくことです。
私が八段に昇段したのは今から4年ほど前になりますが、八段になったからといって、すぐに高名な範士の先生方のような剣道を実践することはできません。
代の今はまだ成長の過程であり、これまで培ってきた剣道を少しずつマイナーチェンジしながら、さらなる高みを目指していく時期だと考えています。具体的に言うならば、まだどんな間合からでも技を出したいという気持ちがあり、そのためには、やはり多彩な技の引き出しをもっておくべきだと思います。
これは私見として聞いていただきたいのですが、剣道には永きにわたる伝統の中で紡いできた多種多様な技があります。たとえば私は片手技をよく使いますが、こういった技は使い手がいなくなると消え去ってしまう可能性もあります。それでは剣道という世界そのものが狭まってしまうと思っています。
剣道は「実」と「実」のぶつかり合いだけでなく、攻めて相手の「虚」をつくり出して打つ、またはこちらから「虚」をみせて相手を引き出すなども醍醐味の一つです。これらも立派な剣道の攻防であると思いますし、剣道とはそのくらい奥深いものであるはずです。とくに私のような体格で劣るものは、さまざまに工夫を凝らさなければ相手を打つことはできません。もちろん、中心の取り合いを制し、相手にっ攻め勝って打つことが大前提ではありますが、体が動くうちは多彩な攻め・技を繰り出せるように修練していきたいと考えています。
小学生から範士の先生まで
剣を交えたすべての人間から学ぶ
残りの記事は 剣道時代インターナショナル 有料会員の方のみご覧いただけます





No Comments