※この記事は『剣道時代 2020年1月号』に掲載されたものです。
史上初の3連覇が懸かった西村英久選手(熊本)が緒戦敗退。決勝に勝ち上がったのは、捨て切った打突が光る正統派の選手同士。過去に2度決勝まで駒を進めた國友鍊太朗選手(福岡)と茨城代表で筑波大学3年生の松﨑賢士郎選手。立ち上がりから鋭い気迫で松﨑選手を終始攻め続けた國友選手が、延長戦で鋭い出小手を決め念願の賜杯を手にした。3位は前田康喜選手(大阪)と前回大会に続いて竹下洋平選手(大分)が入賞を果たした。
勝負の視点:攻め続けて引き出す
決勝●國友鍊太朗(福岡)コ― 松﨑賢士郎(茨城)
平成26年の第62回大会、平成28年の第64回大会と過去に二度この決勝の舞台まで勝ち上がってきた國友選手。しかしその2回とも苦杯を舐めさせられてきた。とくに62回大会の決勝戦の相手は当時筑波大学3年生の竹ノ内佑也選手。ちょうど松﨑選手と同じ年齢である。何らかの因縁を感じずにはいられない。
しかし、今年の國友選手は5年前とは違う。ここまでの勝ち上がりと同様、試合開始直後から端正な構えに気迫を込める。以前から構えの良さには定評のあった國友選手。その良さの最大のポイントは左の収まりだろう。「左足、左の膕、左腰、左脇、左拳」がピタリと決まっている。このことにより、丹田に集めた気が剣先から相手に向かって激しく放射され圧となるのだ。面を得意としながらも、剣先が浮くことはなくむしろ低めについているため、体つきはスラッとしているが構え合った時の威圧感にはすさまじいものがある。構えのよさでは松﨑選手も負けてはいない。足幅はやや前後に広めながら下半身が安定し重心が真ん中に落ちている。それでいて上半身には力みがない。
182センチと長身ながら足さばきが柔らかく見た目以上に懐が深い。それも理想的な上虚下実ができているからだ。攻めに圧があるわけではないが、自分の打ち間をしっかり理解し、相手の打突を見切る眼に優れており、機会とみれば外連味なく打突に転じる大胆さを持ち合わせている。全日本の強化に呼ばれていることに加え、今年は国体の開催が茨城県でその強化も松﨑選手の大躍進に繋がっていると考えられる。
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