攻め 構え

相手を動かして打て(花澤博夫)

2022年11月28日

KENDOJIDAI 2021.12

撮影=西口邦彦

「相手を動かすには気持ちを動揺させること、構えを崩すことが大切です」と花澤教士は強調する。大阪ガスなどで一般愛好家を指導する花澤教士は正しい竹刀操作を習得した上で、表裏と上下、4つの攻め口を身に着けることをすすめている。

花澤博夫教士八段

はなざわ・ひろお/昭和25年愛媛県生まれ。今治北高校(大三島分校)から大阪体育大学に進み、卒業後、大阪府公立中学校教諭となる。高石市教育委員、大阪府教育委員を経て高石市小・中学校校長を歴任し、平成22年退職。その後、大阪体育大学非常勤講師となり、令和3年に終え、現在にいたる。大阪ガス師範、大阪市立修道館講師、日曜会師範、大阪府学生剣道連盟会長、堺市剣道協会会長。

 対人競技の中でも剣道・柔道・相撲等においては、体軸(体中心線)を攻め崩す(構えのバランス)ことが勝敗に繋がる大切な要素であると考えています。

 相撲や柔道では剣道のように竹刀を媒介としての間(空間)がないため、体軸を崩すことで勝負が決まってしまうといっても過言ではないと思います。

 ところが、剣道では相手の構えを崩して攻めたつもりでも、相手に攻めが響いていなければ、逆に打たれたり、応じ技で返されたりしてしまいます。そのような現象だけでは相手の竹刀操作で捌かれたり、防御されてしまうことになります。そこで、少しでもそのような状況を減らし、有効打突につなげるために相手を攻め、心を動かすことが必要になります。

 自分より上手の先生方に稽古をお願いした時、攻め上げられてどうしようもなくなり技を出すと、飛んで火にいる夏の虫とばかりに打たれた経験がだれもがあると思います。その時の状態を分析してみると、先生方はしっかりした構えで常に先の先で「打つぞ、突くぞ」と丹田の弛みなく、気の弛みなく、また呼吸の乱れなく相手を押し寄せる波のごとく攻め立てています。こちらは打突に行きたいけれど行けない、行くと打たれる、すべてお見通しの状態です。

 これを究極の「攻め」と受け止め、稽古に取り組んでいますが、一朝一夕で身に付くものではありません。攻めとは、気攻め、体攻め、竹刀操作攻め、により「相手の構えを崩して隙を作る」「気持ちを動揺させて隙を作る」ことで、打突し易い状態を作ることですが、攻めが効いていると実感できないのが剣道の難しさです。

 現在、大阪ガス剣道部、修道館、日曜会などで一般愛好家の方々に対して指導をする機会をいただいていますが構え方や打ち方は教本に載っています。しかし、攻め方や崩し方、相手を動かす方法については千差万別であり、試行錯誤の毎日です。

 攻め方にも色々あり、どの攻め方であろうと、相手が驚く、恐れることで構えが崩れたり、動作に起こりが見えた状態があれば、それが打突の機会になります。間髪を入れずに打突が出来なければ、機会を逸してしまい、逆に相手に打ち込まれることになります。

 故池田勇治先生から「打突の機会は匂いだよ」とご教授いただいたことがあります。その時は何のことか理解に苦しみましたが、今思うと自分が攻めた形の中で相手の反応を確かめる(匂いを嗅ぐ)、まさしくその時が、打突の機会ではないかと考えるようになりました。日頃の稽古の中で常に意識し、その機会を逃さず自分の技を繰り出すように心掛けています。

 わたしは攻め方を身につける方法として、上から乗るように攻める、下から攻める、表から攻める、裏から攻めるという、4つの攻め口を覚えることが重要と考えています。

 具体的な方法については後述しますが、この4つの攻め口を相手によって使い分けることで、優位な展開に持ち込むのです。

無理のない、安定感のある自然な姿勢が構え



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