2023.6 KENDOJIDAI
構えは左手・左足・左腰。左半身を意識することで攻めに威力が出る。攻めに威力をつけるには、とくに左足を基軸とした運用が重要。いまも自身の鍛練を怠らない東良美範士が大事にしている足さばきの教えを紹介する。
東 良美 範士八段
ひがし・よしみ/昭和32年生まれ、鹿児島県出身。鹿児島商工高校から法政大学を経て、卒業後、愛知県警に奉職する。愛知県警察主席師範を最後に退職し、現在は愛知県警察名誉師範、星城大学剣道部師範、名古屋トヨペット剣道部師範等を務める。主な実績として、全日本選抜八段優勝大会優勝、全日本選手権大会出場、全日本東西対抗大会出場、国体優勝等がある。第19回世界剣道選手権大会日本代表監督。
動的な構えが重要
打てる姿勢を左足でつくる
剣道は構えが重要であることは周知の通りですが、構える際は左手・左腰・左足を万全な状態にし、この構えをなるべく崩さないようにしています。構えというと、どうしても静的な状態を連想してしまいますが、動いているときに安定していないと意味がありません。とくに重要となるのは左足です。左足でしっかりと床を踏み、いつでも打てる状態にしておかないと攻めることも、さばくこともできません。まずは安定した構えをつくり、よどみない足さばきを身につけることが、相手を攻め崩すことにつながります。
構えで重要になるのは左手・左腰・左足の左半身のラインです。この左半身がおさまっていないと相手に圧力が伝わりません。技は気剣体が一致していることが大切ですが、打つ前、すなわち構えも気剣体が一致していなければ相手を攻めることができないと考えています。
先日、全国高校選抜剣道大会が愛知県で開催されました。上位に進んだチームの選手は総じて足さばきが巧みであり、打つべき機会にしっかりと打ち切ることができていました。それが結果につながったのは自明の理であり、改めての足さばきを徹底して鍛えることが、いくつになっても、どのレベルになっても必要であることを認識しました。止まった状態で理想の構えをつくることはさほど難しいことではありません。しかし、理想の構えで間合を詰める、攻める、崩す、打つとなると容易なことではないのは周知の通りです。相手を崩す前に自分から崩れてしまうこともよくあることで、なるべく自分を崩さない状態で間合を詰めることが大切です。
剣道の足さばきは、歩み足、送り足、継ぎ足、開き足の4種類です。間合を詰めるときは原則送り足を使います。一足一刀の間合から打ち間に入るまでは、とくに細心の注意を払う必要があり、主として送り足を使うのは周知の通りです。大きく詰めると相手に起こりを察知されるので小さく、細かく詰める必要があります。
この送り足に加え、わたしはときに継ぎ足を使うこともあります。このほうが相手に察知されにくいからで、とくに脚力が弱い女性や中高年の方にすすめています。目的は相手に起こりを察知されないことですので、すべて継ぎ足で詰める必要はなく、どのようにすれば相手に察知されにくくなるのかを日頃から研究することが大切だと考えています。
足さばきの稽古は素振りと同様、一人で行なうことができます。地道に繰り返すことで、正確な足さばきが身に着きますので、根気よく続けることが大切です。
正しく打つことを求める
送り足を使った打ち込みを励行
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