2023.11 KENDOJIDAI
撮影=西口邦彦
構成=土屋智弘
鮮やかな出ばな面で人々を魅了してきた佐藤教士。仕掛け技を磨いたことで、自らの溜めや相手の引き出し方に新たな境地を見い出したと語る。今夏、最高峰の八段に合格した佐藤教士に、審査へ向けて行った対策を踏まえつつ、仕掛け技について伺った。
佐藤博光 教士八段
この8月に受審した八段審査で昇段することができました。今回は仕掛け技がテーマとのことですが、その審査を踏まえた上でお話したいと思います。
5月に受けた八段審査の反省点を踏まえ、改めて「仕掛ける」という意味で、自らの構えから打突に至る攻め、打突を見つめ直しました。そこには当然仕掛けてからの出ばな技、応じ技も含まれます。
長年試合で戦ってきた私としては、相手の入り際を狙う出ばな技は得意とするところでした。
特に私は背が高いということもあり、自然と出ばな面を中心とする面技を主体に磨いてきました。身体が自然と仕事をするまでに錬磨した自信はありますが、改めてその出ばな面を見つめ直しました。すると相手が入って来てから打突する流れがワンパターンになっている気がしました。つまり右足を少し入れながら、左足は溜めて相手の出を打つというパターンです。もちろん攻めや誘いも行っていたのですが、昇段にあたっては、より相手を誘う仕掛けが必要になると感じました。
また、自分勝手な打ちやすい構えから打突するのではなく、足幅や右腕への力の入れ方などを少しずつ修正していきました。そして〝ここだ〟という機会で技を出す際は、捨てて打ち切らなければいけないと肝に銘じました。審査にあたっては様々な先生方にアドバイスをいただきましたが、その誰しもに共通していたのが、「打ち切る」ということです。従来は、打ち切ったつもりで、実は打ち切れていなかったのかと、改めて自分の打突を見つめ直しました。
それらを実践・検証する上で役立ったのが、基本打ちの稽古でした。幸にも私自身の勤務体系が変わり、特練の稽古以外にも、午前中本部での朝稽古に参加することが叶いました。そちらで課題を持ちながら行った打ち込み稽古が功を奏しました。そして練り上げるという意味では特練員達との日々の稽古で実戦を積み重ねました。
その打ち込み稽古をしているうちに感じてくるものがありました。それは地稽古だけでは鍛えられない基本の大事さです。仕掛けていく技を錬磨するからこそ、出ばなや応じ技に通じる攻めの気分が醸成できます。今回の審査では、面返し胴も打ちましたが、スッと攻めを効かせた後の技でしたので、相手を引き出したと評価いただいたのだと思います。実際の八段審査では、誰しもが面を狙っているため、返し技を狙う方は多いでしょうが、いわゆる〝見てしまっている。待ってしまっている〟という技ですと、審査員の先生方の評価は得難いと実感しました。私自身も不合格であった立合では、自分の攻めが雑で身勝手であったような気がしています。相手をどう攻め使うかというのを八段審査では重んじています。ですから攻めがなければいけませんし、相手と合気になり、その上で引き出すやり方で、仕掛けて捉えることが大切だと心得て審査に臨みました。
相手を引き出し打ち切る面打ち
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