剣道の技 基本稽古

切り返しで地力を養う(武井幸二)

2024年5月6日

2024.5 KENDOJIDAI

撮影=西口邦彦

国士舘大学剣道部の切り返しは原則、9本の連続左右面を3回行なう。切り返しは旺盛な気力を養い、体幹を鍛えるなどの効果がある。工夫・研究し続けることが大切だ。

武井幸二教士八段

たけい・こうじ/昭和42年茨城県生まれ。巣鴨商業高校から国士舘大学に進み、卒業後、山形県教員を経て母校国士舘大学の教員となる。世界剣道選手権大会個人2位、全日本剣道選手権大会出場、全国教職員大会優勝、国体優勝など。現在、国士舘大学教授、剣道部副部長。

 国士舘大学初代剣道部長の大野操一郎先生は「切り返しは大きく」とよくおっしゃっていました。当時、剣道部員が200人以上いましたので、指導陣の先生方から細かくご指導をいただくことはなかなかできませんでしたが、日頃、助言いただいたことを自分で考えながら稽古を繰り返していました。

 切り返しについては、正面を打ち込んだのち、9本の左右面を2回繰り返すのが一般的ですが、国士舘ではそれを3回繰り返していました。範を示す剣道を身につけてもらいたいという大野先生の意図によるものと理解しており、その切り返しに加え、30本、50本、100本と本数を増やしながら追い込んでいくのも国士舘の稽古であり、それは今も変わりません。

 切り返しは強靭な構えをつくるだけでなく、間合や足さばき、正しい太刀筋や剣道独特の手の内の使い方の修得など技能の向上に欠かせない稽古ですが、学生にはそのことを身体で理解してもらうことがとても大切なことであると実感しています。なぜ、切り返しの稽古に時間を費やすかを理解して行なわないと、単なる運動になってしまいます。大技で行なう切り返しが、なぜ実戦で遣う小さく鋭い打ちにつながるのかをよく考え、実施するように指導しています。

 剣道では、構えた時の左拳の納まりが攻めの強さをつくります。打突の強度も、打突時の左手の位置で決まりますが、それは切り返しを繰り返すことで身についていくものと考えています。国士舘では1年、2年時は基礎・基本の習得につとめて土台をつくり、3年、4年時に花が開くような指導を伝統としています。その土台づくりに欠かせないのが切り返しだと考えています。

 11月の八段審査は2日間で9人の合格者が生まれました。そのうち4人が国士舘大学の先輩方でした。この結果は我々国士舘で指導にあたる者にとってとても勇気づけられる結果となりました。

 わたしも日々の稽古で切り返しを必ず行なうようにしています。少し怠ると身体の出方や手の内の感触に違和感が生じます。

 切り返しは掛かり手として正しく行なうことが大切ですが、それと同時に正しく受けることができなければなりません。その意味でも元立ちの重要性については機会があるごとに説明し、よい元立ちとはなにかを常に工夫・研究することです。

 切り返しは大強速軽の教えを頭に入れながら行なうことが大切ですが、元立ちが正しく受けないと、それを実践することができません。



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