インタビュー

タイトル:生徒は想像を超えていく(女性 剣道指導者 座談会)前編

2024年12月30日

2016.8 KENDOJIDAI

撮影=笹井タカマサ
司会=山根洋平(剣道緑の風代表)

3人が指導する剣道部員の約8割は中学校から剣道を始めた。中学3年間での部活動は実質2年半だが、剣道経験者のライバルを倒し、地区大会を勝ち抜き、県大会へと導いている。寄り添う指導で生徒にやる気を与え、剣道を好きにさせていた。それぞれの取り組みとは?

(平成28年5月15日、川口市立芝西中学にて)

白井克奈
しらい・かつな/埼玉県入間市出身。埼玉県警察狭山警察少年剣道教室で剣道を始め、中学・高校時代、アメリカ・イリノイ州で過ごす。東京学芸大学卒業後、千葉県市原市の教員となる。現在、市原市立五井中学校教諭。剣道三段。

磯部摩耶子
いそべ・まやこ/群馬県高崎市出身。発心館堀越道場で竹刀を握り、高崎女子高校から埼玉大学に進み、埼玉大学時代に全日本女子学生剣道優勝大会で優勝。卒業後、群馬県教員となり、現在、富岡市立南中学校教諭。剣道四段。

山中寿美
やまなか・ことみ/青森県弘前市出身。秀峰館で竹刀を握り、左沢高校から埼玉大学に進む。インターハイ団体3位、全日本女子学生剣道優勝大会優勝。卒業後、埼玉県教員となり、現在、川口市立芝西中学校教諭。剣道四段。

山根洋平
やまね・ようへい/埼玉県北本市出身。解脱錬心館で竹刀を握る。埼玉栄高校卒業。剣道緑の風主宰。さいたま市立三室中学校剣道部外部指導者。

生徒を運動仕様の身体にする

山根 先生方とは強化練習会や錬成会などでご一緒する機会があり、生徒を指導している姿を見ていて、とてもうまいと感じることがたくさんあります。新学期が始まって約1ヶ月が経ちましたが、新入部員はどのくらい獲得できましたか。

磯部 今年は男女合わせて7人入りました。男子5人、女子2人です。そのうち経験者が男子1人、女子1人です。未経験者5人です。

白井 五井中は男女15人も入りました!女子8人、男子7人です。そのうち剣道未経験者は女子7人、男子5人です。新入生歓迎会の部活動紹介で連続応じ技を3年生にさせたのですが、「2年たつとこのくらいになれます!」とアピールしたのがよかったのかもしれません。

山中 芝西中学校も15人でした。男子8人、女子7人、そのうち未経験者は男子2人、女子0人でした。今年は経験者が多いですが、伝統的にほとんどが未経験者です。

山根 ほとんどが未経験者なわけですね。練習試合をさせてもらうこともあるけど、中学から剣道を始めたことをまったく感じさせません。

白井 試合の敗因で「初心者ばかりだから」と言う人がいますが、わたしは嫌いですね。初心者だけで勝ったのは自慢になるかもしれませんが、中学校から剣道を始める生徒は少なくないです。

山中 ある会議で「勝つためになにが必要か」という議論になり、「素材」と答えた方がいました。確かに素材は大事かもしれませんが、それだけではないと思います。わたしは左沢高校の出身で、恩師の斎藤学先生は高校から始めた生徒を指導してインターハイ優勝をさせています。斎藤先生はとても研究熱心で、どうしたら生徒が強くなれるのかをいつも考えていらっしゃいました。こうした経験があるので、剣道を指導する上で剣道経験の有無はあまり気にしていません。

山根 これは感覚的なものですが、女子生徒に関しては最後の1日まで伸びるような気がします。伸びしろが大きいので初心者と経験者の差を指導力で埋めることができると思います。そもそも入部希望者はどんな生徒ですか?

白井 他の部活の先輩は怖そうだけど、剣道部の先輩は優しそうだから(笑)

磯部 それありますね。うちもバスケットボールはきついとかネガティブな理由が多いです。運動能力が高くない生徒が集まっているのが現状です。

白井 体育祭の徒競走で剣道部が代表で走っているのをほとんど見たことないです。今年は1人走っていましたけれど。

山中 体力テストの上位に剣道部員がなかなか入れず、それで朝のトレーニングでランニングを取り入れたくらいです。

山根 たしかに運動能力は高くないかもしれないですね。そんな生徒を指導しなければならないのですが、指導をする上での具体的な目標などありますか?

山中 最初は身体づくりです。防具は4キロ近くあります。いきなり激しい運動をさせるとケガをさせてしまいます。トレーニングと素振りで剣道の体力をつけることからはじめています。

磯部 うちも体力づくりですね。足さばきと素振りを重点的に行います。7月に地区大会があり、この大会は誰でも出場することができます。防具は約1ヶ月で着けさせるのですが、この大会でたとえ勝てなくても「剣道はたのしい」と思ってもらえるように導きます。

白井 うちは月末の市原市民大会がデビュー戦になりますので、ここで大きな声を出して相手に向き合えることをめざしています。

山中 ゲーム感覚というか、楽しみを与えることが必要です。だから芝西では初心者には習熟度をチェックするカードを持たせて、素振りをこなした本数を色でつぶしていきます。その他、切り返しや面打ちなどのチェック項目があるのですが、わたし、もしくは上級生から合格と認められれば次のステップに進めます。素振りは合算して4千本を終えた時点で稽古着・袴を着けることにしているのですが、初心者でも差が出ます。競争心を持たせるようにしています。

白井 わたしは6本の柱を常に意識させるようにしています。「①姿勢」「②足さばき」「③構え」「④振り」「⑤握り(手の内)」「⑥発声」です。剣道を続けていく上でも大事な要素ですが、これらを総合的に学ばせるようにしています。

山中 中学3年間で剣道は楽しいし、続けたいと思わせるのが目的ですが、3年間、基本ばかりやっていても生徒はあきてしまいます。中2で試合で勝つ喜びを覚えてもらい、自発的に取り組んでもらえるように取り組んでいます。ですから1年の秋までに気剣体一致した面を大きな発声とともにできればよいと思っています。胴打ちや小手打ちは自然と身についています。

白井 2年の秋の新人戦までに面と相小手面を打てるようになればいいですよね。

山中 まずは運動選手にさせるまでが一苦労ですが、その分、教えがいもありますね。

擬態語でリズムと感覚を重視



残りの記事は 剣道時代インターナショナル 有料会員の方のみご覧いただけます

ログイン

or

登録

登録


Subscribe by:

You Might Also Like

No Comments

Leave a Reply