KENDOJIDAI 2025.8
撮影=西口邦彦
4月開催の全日本選抜剣道八段優勝大会で3位入賞を果たした宮崎史裕教士。力みのない自在な剣風で会場を沸かせた。なぜ一拍子の打突を身につけなければならないのか。百戦錬磨の宮崎教士にお聞きした。
宮崎史裕

全日本剣道連盟発行『剣道講習会資料』に掲載された指導法講習における「重点事項」には「一足一刀の間合から、一拍子で正しく打ち切る技能を中心課題とするとともに、それぞれの技量に応じて理に適った応用技の習得を図る」と記されています。
一拍子で正しく打ち切るには力みのない竹刀操作を身につけなければなりませんが、そもそもなぜ一拍子で打つことが重要なのかというと、有効打突は一拍子の打突が原則になるからだと考えています。
とくに六段以上の高段者をめざすならば有効打突の要素のひとつ〝冴え〟を身につけなければなりません。冴えは打突時に、瞬間的に手の内が絞られることによって生まれます。言葉では表現しにくいですが、右手と左手が協調的に働くことでだれもが認める一本になります。
この打突を身につけるには稽古するしかないのですが、素振り、打ち込み、切り返しなどの基本稽古を、常に〝正しさ〟を求めて行なうことです。
〝正しさ〟は抽象的な表現になりますが、まずは教本に記された通りの剣道ができているかを常に意識することが大切だと考えています。
一拍子の打突を身につけるには、正しい構えから正しい竹刀操作を心がけることに尽きますが、ひとつ必ず心がけておきたいのが左手を意識して竹刀を操作するということです。左手を意識して竹刀を振ると肩・肘・手首の順番で動かすことができ、冴えのある打突につながります。
一方、右手中心で振ってしまうと右手と肘のみで操作してしまい、肩を使うことができません。一見、速く操作しているように見えますが、機会に応じて円滑に技を出すことが難しくなると考えています。
とくに六段以上の高段者をめざすには、その段位にふさわしい剣道を身につけていなければなりません。高いレベルでの基本を身につけなければなりませんので、左手主導の竹刀操作の習得は必須と言えます。
剣道における中段の構えは通常、右手、右足を前に出して構えるので、どうしても右半身に余分な力が入ってしまいがちです。試合や審査など実戦では緊張からとくに余分な力が入り、正確な竹刀操作ができなくなります。よって普段の稽古では正しい竹刀操作から円滑に技を出せていたかを常に確認して取り組むことが大切になります。
左拳を身体の中心線において竹刀を振る
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