2025.10 KENDOJIDAI
撮影=笹井タカマサ
*本記事に掲載された画像の無断転載・使用を固く禁じます。
「学生たちには生涯にわたって通用する技を身につけてもらいたいと考え、指導しています。その代表格が出ばな技です」と竹中教士は言う。有効打突を決めるにはリスクを覚悟して技を出さなければならない。2年後の世界剣道選手権大会において女子日本代表監督をつとめる竹中教士にその重要性を伺った。
竹中健太郎 教士八段

たけなか・けんたろう/昭和47年兵庫県生まれ。PL学園高校から筑波大学に進み、卒業後鳥取県高校教員となる。平成20年4月より鹿屋体育大学教員。世界剣道選手権大会個人2位、全日本剣道選手権大会ベスト8、全日本東西対抗出場、全国教職員大会個人・団体優勝、全日本選抜剣道七段選手権大会2位など。現在、同大学体育学部教授(博士)、剣道部総監督、第15回~18回世界剣道選手権大会女子日本代表コーチ。同第19回、第20回女子日本代表監督。
剣道は必然の一本が求められ、「勝って打つ」ことを促す指導に努めています。それには自分勝手に技を出すのではなく、いわゆる打突の好機を捉えて打たなければなりません。打突の好機には「技の起こり」「技の尽きたところ」「相手が引いたところ」「技を受け止めたところ」などがあります。どの好機も適切に臨機応変に打ち分ける技術を身につけることが理想になります。
近年、高校生や大学生と稽古をすると、面を攻めて小手、表を攻めて裏から面など、自分だけで一方的に攻めて打つ技を遣う傾向が高くなりました。このような技は、自分が打たれるリスクが少なく、一見、効果的と思われますが、スピードやパワーがないと成功しづらい技とも言えます。スピードやパワーには限界がありますので、相手の状況を感じ取りながら、そこに生まれた隙を捉えることを学び、次の段階に進んでいかなければなりません。
とくに鹿屋体育大学で学ぶ学生は卒業後、剣道指導者として後進を導く立場になる者も多く、生涯にわたって使える技を身につけてほしいと考え、指導にあたっています。
剣道は「打てるところは打たれるところ」という教えがあるように、リスクを覚悟して技を打ち切ることで、誰もが認める一本が生まれます。その代表格の技が出ばな技です。出ばなは相手の心理的な状況を察知し、誘い出さなければならず、難易度が高いものです。
私はリスクを覚悟して打つことを〝攻防の狭間で打つ〟と表現しています。打つか、打たれるかの紙一重の機会を捉えたとき、見事な有効打突が生まれると考えています。とくに昇段審査は同格が相手であり、より高度な一本が求められます。打つか、打たれるかぎりぎりのところまで溜めて技を出さなければならず、大きなリスクがあります。
よって、日頃の稽古では打たれることを嫌がらず、仕かけ技を中心に積極的に技を出すことが重要になります。このような剣道を実践するには、お互いが合気となり、攻め合うことが大切になります。そこから技を出すことができれば、たとえ打突部位をとらえることができなくても、良い形で打ち抜けることができます。
攻防において間合を詰める際は、小刻みに足を運び、左足をいつでも打てる状態にすることが大切です。左足が緩むと、打ち間に入ったとき、正確に打つことができなくなります。裏を返せば、良い技が出たときが、攻め勝って打てたときです。そのような一本はなかなか打つことはできませんが、ここを求めて稽古を続けることに剣道の素晴らしさがあると考えています。
左足でしっかりと踏み切って打つ
残りの記事は 剣道時代インターナショナル 有料会員の方のみご覧いただけます





No Comments