稽古方法

伸びる剣道の法則(笠村浩二)

2025年11月17日

2025.11 KENDOJIDAI
構成=土屋智弘
写真=西口邦彦

長年にわたる剣道修行の中から、金科玉条ともいえる稽古の心得を笠村範士にお聞きした。剣道は先人が築いた日本の伝統文化であり、技術の習得にとどまらず人間形成を目的とする生涯修行の道であり、精神を受け継ぎ、正しく伝える姿勢が重要と範士は説く。

笠村浩二範士

かさむら・こうじ/昭和26年熊本県生まれ。鎮西高校を卒業し、神奈川県警に奉職、首席師範を務め、後に武道館長を兼務したのちに退官。現在は日本警備株式会社の顧問などを務める。主な戦歴に全日本選手権大会ベスト8、全国警察官大会団体・個人優勝、寬仁親王杯八段選抜大会優勝、全日本選抜剣道八段優勝大会3位など。

伝統文化としての剣道を追求する

 剣道を志す一修行者として、先人・先生方から頂いた薫陶と、私自身が感じてきた心得を述べます。

 まず剣道には深い歴史と文化があり、それを正しく引き継ぎ、次世代に伝えていくという心構えがなくてはなりません。剣道は、先人が心血を注ぎ命懸けで築き上げ、今日まで引き継がれている日本の伝統文化です。伝統とは何かということを、剣道を志す一人ひとりが心に留め、その精神を絶やすことなく次世代に引き継ぐべきです。

 そのためには自ら進んで剣道に取り組む姿勢、学ぶ姿勢が大切となるでしょう。単に技術の習得にとどまらず、人間性を高めるものとして、剣道を捉えることです。それが他競技にはない、武道の道であると考えます。特に剣道は生涯にわたる修行となります。指導者は技術を伝えることはもちろん、剣道で培われる精神力・気力・心の持ち方など、学ぶ姿勢や取り組む姿勢も含め、人間形成を重視して教え導く必要があります。「剣の理法の修錬による人間形成の道である」と全剣連は剣道の理念として掲げており、まさにその通りです。

 私も特練員の現役時代は勝利を追求して我武者羅に稽古をいたしましたが、今は自己を律し、精神力や心の在り方を高めていくことに重きを置いています。その心持ちで、日々の稽古に精進し励むことが、充実した生涯剣道を全うすることになると感じています。正しい剣道を目指し、技術と精神の両面を鍛え、心の修養を怠らないことが大切です。

礼儀と尊敬の心
仲間との絆を重んじる

 剣道は「礼に始まり礼に終わる」と言われております。相手への敬意を示す教えや、礼儀を重んじる姿勢を育てることが大切です。礼儀正しさは剣道の技術以上に重要な要素となりますので、指導者は特に低段者に対して、しっかり教え導き、自ら範を示す心掛けが必要となります。道場は修行の場であり、出入の際の礼から始まり退出するまで、見学者も含め気を付けなければなりません。特に剣道をやっている幼少者、低段者は指導者、高段者の一挙手一投足まで良く見ています。正しい礼儀作法、礼節を尊ぶことは、自分自身を律する表れでもあり、相手への敬意を示すことに繋がります。

 また剣道は個人競技ですが、仲間との交流や協力、支え合いは不可欠です。道場で共に汗を流し、切磋琢磨、お互いを高め合いながら剣道を追求することによって、友情や信頼関係が築かれてくるものです。その絆は、剣道を続ける上で大きな支えともなります。

 剣道の技術は師から弟子へと直接伝えることが多いものです。弟子が基本技や応用技を覚える際は、まず指導者が正しい動作を示し、反復練習を通じて身体に覚えさせることが重要です。それが剣道の基礎になります。ですから指導者は、低段者にしっかり教え導き、何においても自らが範を示す心掛けが必要です。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という至言をかの山本五十六が残していますが、まさにこのことを表している言葉だと感じます。

 剣道の基礎は、建物に例えるならば基礎と土台作りです。立派な寺社仏閣も、基礎の上に土台がしっかりしていなければ、その上の建物も確固たるものにはなりません。まずは土台作りをしっかりしてやり、その上で錬度に応じた指導で、適正な技術を身につけさせなければなりません。

先人の言葉で
剣道修行を貫いていく



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