KENDOJIDAI 2022.2
素振り、打ち込み、切り返し。平素から基本稽古を地道に繰り返すことが上達の近道と言われているが、その方法に瑕疵があったら一大事。基本稽古は応用につながってこそ基本である。質の高い基本稽古を一流剣道家から学ぶ。
構成=寺岡智之
撮影=西口邦彦
国際武道大学で指導の任にあたる岩切公治教士は、剣道を求めていく筋道として基本稽古の繰り返しは必須であると語る。「日々の稽古で基本を習得し、上手の先生との稽古によって実践につなげていくべきです」。岩切教士に基本稽古を行なう上での注意すべき要点について語ってもらったー。
岩切公治教士八段
いわきり・きみはる/昭和年生まれ、宮崎県出身。高千穂高校から国際武道大学に進み、卒業後、同大学の教員となる。主な実績として、全日本東西対抗大会や国体、全国教職員大会、全日本都道府県対抗大会等に出場。現在は国際武道大学教授、剣道部監督を務める
基本稽古の繰り返しで将来につながる筋道をつくる
基本稽古の質を高めていくことは、日々の稽古で地力を蓄えていくためにも意識しておかねばならないことでしょう。本学では、素振りや足さばき、切り返しを毎日の稽古で必ず行なうようにしています。一時、学生が4学年で400名を超えていたような時代は、稽古場所の確保から基本稽古がままならないこともありましたが、現在は朝稽古と夕方の稽古において、時間を割いて行なっています。
なぜそれほどまでに基本稽古を大事にするのか。それは、本学で剣道を学んだ者は、将来、各地で指導的立場となっていくからです。指導者とは剣道を正しく継承していくのが目的であり、ただ勝ち方を教えるだけではいけません。私も学生たちには事あるごとに、勝ち方を求めていくことを伝えています。構えを崩さず、相手を攻め崩して打つ。これが剣道の本筋です。とくに入学したばかりの学生には、稽古や試合においても「面を打って打たれてこい」ということを言います。元立ちの先生方や対戦相手に打たれたり返されたりすることで、自分の悪い部分が分かり、基本を習得することの大切さを理解しやすくなるからです。
学生生活の4年間は、長いようで短いものです。その4年間のなかで将来につながる筋道をつくること。これが見えてくれば、卒業後も目指す方向が狂わないはずです。その筋道をつけてあげることが、我々大学指導者の務めであると考えています。
昨今は稽古のやり方についてもさまざまな方法論があります。ですが、本学では素振り、足さばき、切り返し、基本稽古、地稽古、掛かり稽古、そして追い込みと、一般的なものしか行なっていません。それ以上の技術的な部分に関しては、学生各々が考えていくものであると思います。それよりも、全員で学ぶ日々の稽古においては、基本をしっかりと習得することに主眼を置く必要があると感じています。
上手に掛かる稽古で基本と実践をつなげていく
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