2023.2 KENDOJIDAI
撮影=笹井タカマサ
村上選手が日本武道館で放った面技は、人々の記憶に焼き付いたことだろう。前回ベスト8。2回目の出場で日本一を手にした村上哲彦五段を特集する。
村上哲彦
30歳の結実。飛躍の初優勝
令和4年、第70回全日本選手権は村上哲彦選手の優勝で幕を閉じた。前回初出場ながらベスト8入り、さらに今回大きく飛躍して初優勝となった。愛媛県警察のエースの台頭だ。
「愛媛県勢初の優勝ということで、メディアにも多数取り上げていただきました。自分で思っていた以上に反響があって、世間の皆様に認めていただいたような気がして、それが私にとって大変嬉しいことでした」
愛媛県警奉職3年目(2017年)に開催された地元えひめ国体以来注目されていた若手剣士のひとりだった。さらなる飛躍を求めていた矢先、新型コロナウイルス流行によって稽古を自粛されてしまう。活躍の機会に恵まれなかったが、昨年全日本選手権に初出場。そして今回2年連続2回目の出場で初優勝を果たした。
「前回は初めての出場だったので、入場する時の場所や会場の雰囲気、ウォーミングアップ会場がどこかなどの細かい点がわからないことは(ストレスというほどではありませんが)、多少気を揉んでしまう点ではありました。今年はそういった点も要領を得ていたので、より集中して試合に臨めたような気がします」
前回のことが学びになり、また、ベスト8という結果にも手ごたえをつかんでいた。今年こそという思いもあったことだろう。百田尚眞選手(福岡県警)や前回優勝者の星子選手を破った山下雄輔選手(三重県警)、勢いに乗る学生剣士・池田虎ノ介選手(筑波大3年)を破って決勝へ。
最後の対戦相手は安藤翔選手(国士舘大教員)。世界大会団体優勝・個人優勝、出場選手たちの中でもトップクラスの実力者だ。
「少年大会の頃から全国クラスで活躍されていた方なので、自分とは違うステージにいる人と勝手に思っていたような気がします。数年前だったら、対戦すら想像ができなかったと思います。しかし、警察に入ってから国体強化や遠征など、様々な機会をいただき、少しずつ結果が出て、そして今ここで安藤選手と試合をさせていただいたことは自信になりました」
中盤に差し掛かろうとする1分20秒過ぎ、安藤選手が攻め入ろうとするところで村上選手が面に跳んだ。二本目開始から取り返そうとする相手の動きをよく読み、3分40秒過ぎにさらに面。鮮やかな面の二本勝ちだった。
残りの記事は 剣道時代インターナショナル 有料会員の方のみご覧いただけます
No Comments