2023.1 KENDOJIDAI
構成=寺岡智之
写真=西口邦彦
東海大学で男子監督を務める天野聡教士は、出ばな技の技術について「攻め勝つ」ことと「一拍子の打突」が大切だと語る。歴史ある同大学剣道部においても、この技術は連綿と受け継がれているそうだ。出ばな技を身につけるためには、日ごろからどのようなポイントに気をつけておかなければならないのか。天野教士にその方法論をうかがったー。
天野聡教士七段
あまの・さとし/昭和52年生まれ、福岡県出身。福岡工大附属高校(現・福岡工大附属城東高校)から東海大学へ進み、同大学院を経て非常勤講師となる。平成20年より専任となり、現在体育学部武道学科准教授。主な戦績として、全国教職員大会個人優勝2回、全日本東西対抗大会出場、全日本都道府県対抗大会出場など。東海大学剣道部男子監督。剣道教士七段
出ばなをとらえるためには
打って勝つのではなく勝って打つ
出ばな技は試合で決まる率が非常に高く、日ごろの稽古で習得に向けて取り組むことはとても大事だと考えています。剣道は、両者が攻防をし合う中で部位を有効に打突することによって勝敗を競い合うものです。打つ・突く・かわすなどのすべての動作は、相手に応じて求められると言ってもよいでしょう。ですから、まずはやりとりの中で打突の機会をつくり出すこと、そして、機会が生まれた瞬間を逃さず、的確に部位をとらえることを求めていく必要があるかと思います。「『打って勝つ』ではなく『勝って打つ』」という言葉にもあるとおり、打突の機会を得るためには攻防で攻め勝たなければなりません。とくに今回のテーマである「出ばな」を考えたときには、この「攻め勝つ」という過程が必須になってくるかと思います。攻防で攻め勝つことによって相手が引き出され、そこに打突の好機が生まれるからです。
相手に攻め勝つためにはなにが大事になるかと考えたときに、一番に思い浮かぶのは中心を取ることでしょう。お互いが中心を取り合う中で、表裏上下の攻めをつかい機会をつくり出します。よく「面を打つためにはどういう攻め方が有効ですか」「小手を打つためにはどうやって手元を浮かせればいいですか」という質問を受けることがありますが、私は技によって攻め方を変えるようなことはしないように心がけています。なぜなら、攻め方を変えてしまうと、相手に何を打ちたいか教えてしまうことになるからです。相手から一本を取ることを最終目標とした場合、こちらの技が分かってしまえばほとんどの場合において、防がれたりかわされたり、または反対に出ばなを打たれたりしてしまうでしょう。そういった観点からも、つねに中心を取りながら同じような攻め口を心がけ、相手の動きに応じて技を変えていくのが、私は良いのではないかと考えています。
好機を逃さずとらえるために
身につけておきたい一拍子の打突
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