2024.1 KENDOJIDAI
撮影=西口邦彦
剣道指導者を養成する国際武道大学は、剣道を正しく求めていく筋道として正しい構えの習得に重点を置いている。常に左拳を正中線に納め、正しい構えから、会心の一本を打つ。監督の岩切教士に稽古を行なう上での要点について語ってもらった。
岩切公治教士八段
いわきり・きみはる/昭和41年宮崎県生まれ。高千穂高校から国際武道大学に進み、卒業後、同大学の教員となる。主な実績として、全日本東西対抗大会や国体、全国教職員大会、全日本都道府県対抗大会等に出場。現在は国際武道大学教授、剣道部監督を務める。
構えは無形の構えとしての「気構え」と、有形の「身構え」によって成り立っています。剣道を始めたとき、だれもが最初に教わることが竹刀の握り方、足の踏み方などの身構えについてだと思います。相手と対峙した際、構えが充実していることが剣道の根幹であり、この五分五分の均衡をどのように打開するのかが攻め合いです。
私は本学二期生として入学し、卒業後も助手として大学に残り、初代主任教授小森園正雄先生(範士九段)のそばでご指導をいただく機会に恵まれました。構えについて小森園先生は「左手の握りを臍から拳一握り絞り下げるように納める」とおっしゃっていました。相手と対峙した際、浮き上がりやすい気と呼吸を、左手の握りを絞り下げることで抑止できます。
一般的に〝構えがしっかりしている〟との評価は、とりわけ左手握りの備えが崩れていない状態であり、それが先を取ることにつながると考えています。
この教えは高段者のみにあてはまるものではなく、どの年代にも求められるものです。構えをつくる際は「左手の握りを臍から拳一握り絞り下げる」という教えを、繰り返し強調し、身体で覚えるように指導を続けています。
構えに関しては、剣道を正しく実践するために避けては通れない要素であるかと思います。構えが崩れていれば、その後の攻めや打突も崩れたものになってしまいます。正しい構えができているからこそ、身体の運用も正しくなり、中心を割った攻めのある剣道につながっていくと思います。
本学で剣道を学んだ者は教員となる者はもちろんのこと、少年剣道等の地域社会において指導者となります。指導者は剣道を正しく継承することができなければならず、ただ勝つことを教えるだけではいけません。私も学生たちには事あるごとに、勝ち方を求めていくことを伝えています。構えを崩さず、相手を攻め崩して打つ。これが剣道の本筋であり、国際武道大学の開学以来の根幹です。
学生生活の4年間は短いものです。その4年間のなかで将来につながる筋道をつくること。これが見えてくれば、卒業後も迷ったときに戻ることができる基軸ができます。その筋道をつけてあげることが、我々大学指導者の務めであると考えています。
眉間から下腹、正中線を意識して構える
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