2024.2 KENDOJIDAI
第71回全日本剣道選手権。23歳、若武者の初出場初優勝は観客に大きな感動をもたらしていた。
頂点へとのぼりつめた棗田選手はあの時、何を感じながら戦っていたのか。
棗田龍介
地元広島に恩返し
感謝の思いが力になった
11月3日の全日本選手権。期待の若手剣士・棗田選手は並み居る強豪を破り、初優勝を果たした。日体大を卒業後、広島県警察に奉職してわずか半年の出来事だった。
初出場と思えない堂々とした戦いぶりが話題となったが、緊張などはしなかったのだろうか。「私は、試合においてあまり調子の波をつくらないように意識している部分があって、いつも通りの自分をあの場面で出すことを目標に臨みました」
日本武道館では何度か試合をした経験はあるが、全日本選手権は初めて。緊張感あふれる大舞台で、目の前の相手に集中し、力を出し切ることのみを考えて戦った。
「目の前の試合に集中していたら、決勝まで勝ち上がったような感覚がありました。『力を出し切って、それでだめなら仕方ない』という気持ちで、相手が誰であっても自分の剣道をやることに徹底しました」
準決勝・決勝の相手は、竹ノ内佑也選手、松﨑賢士郎選手。全日本選手権優勝を経験している実力者たちを相手に一切物怖じしなかった。準決勝では相手の動きを読み、返し面。決勝では上下の攻めで相手をゆさぶって小手。文句なしの一本だった。
「学生時代から予選に挑戦してきましたが、なかなか勝ち上がれませんでした。今年4月からは広島県警察に奉職し、警察学校に入校していた時期もありましたので、練習量が少なく、不安がよぎることもありました。ただ、周りの広島の先生方から常に励ましていただいていました。周りの思いに応えたいという思いでした」
全日本選手権は子供のころからの夢だった。小学4年生の時、「夢」をテーマにした作文を書いた。そこには「広島代表で全日本選手権を優勝し、さらに世界大会に出場すること」を記したという。「夢」を一つずつ現実にしている。
「小学生の頃の夢の為ではありませんが、警察の世界に入るなら、地元に戻ってと決めていました。皆さんにご報告ができて、良かったです」
これまで、広島勢は3人の入賞者がいるが、優勝者はいなかった。今回の優勝は、地元広島に何よりの恩返しとなった。
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