発声

おどろくべき発声の効果とは?(東永幸浩)

2024年2月26日

KENDOJIDAI 2014.11
取材=土屋智弘
撮影=西口邦彦

 発声はそれぞれ独特で、長く気合をかける方もいますが、今の私は大きく短く腹から出すようにしています。試合ですと蹲踞より立ち上がり、打ち間に入る前に腹から大きな声で短く「ヤーッ」と発声します。相手に臨む気持ちは、開始の礼以前から作り上げていきますが、実際、試合が開始されますと、相手から先に発声する場合もありますし、私からの場合もあります。いずれにしても気後れすることなく、自然に発声することが大切です。そうすることで気持ちを高め、集中することができます。

 試合はそれこそ何十年と経験していますが、それでも試合場に立てば、いろいろな思惑が頭を駆け巡ります。腹から大きく掛け声をかけることで、迷いを吹き飛ばし、よい意味で無心になれます。

 また、掛け声には「調子のバロメーター」のようなところもあると思っています。調子が悪いときは、振り返ると、声が出ていないものです。逆に良いときは、掛け声が剣線に乗り、相手に真っ直ぐ届くような感じになります。

東永幸浩 教士七段

ひがしなが・ゆきひろ/昭和52年鹿児島県生まれ。樟南高校から中央大学に進み、卒業後、埼玉県警察に奉職する。全日本選手権大会出場9回(準優勝1回)のほか全日本都道府県対抗大会準優勝、全国警察大会3位、全日本東西対抗大会、国体出場などの実績がある。

構え

 構えと掛け声は、切っても切れないパートナーのようなものです。構えがしっかりとしているときは、先ほど述べたように、声が剣線にのっていくイメージがあります。逆に構えがしっくり来ていないときは、大きな掛け声を出しても、竹刀と一体化しません。

 構えの基本として当然、下腹に力を集中し、上体の無駄な力を抜いてリラックスしていることが重要です。その上で、声を掛けますが、「自信」が声に出ているとき、構えも自然体になっていると感じています。日頃の苦しい稽古や、やりきった思いなどが、その自信となって出てくるものです。

 そうした充実した構えと発声を伴い、相手に対峙すれば、すぐに有効な打突に至れるかというと、そうでもありません。強豪を相手にする場合、相手も構えが充実し、なおかつ声もしっかりしていると、こちらも出たくともすぐには出られません。声を通じて響いてくるものがあります。相手からの意気込みや自信などです。私も負けじと、充実した気勢を掛けます。そうしたお互いの気勢のぶつけあい、なおかつ剣線による中心取りがあり、隙を見出すよう働きかけていくと、打突の機会というのは生まれてきます。

打ち間に入る前に必要な発声とは



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