冴え

鋭い打突を身につける(甲斐修二)

2025年7月7日

2025.5 KENDOJIDAI

取材=栁田直子
※本記事内の画像の無断転載・無断使用を固く禁じます。

甲斐教士は、長年の教員生活の中で「正しい構えが正しい打突を生む」という考えのもと、生徒指導を重ね、自身にもそれを当てはめて剣道修業を行なってきた。その積み重ねが、令和5年の八段合格に結びついた。

甲斐修二 教士八段

かい・しゅうじ/昭和30年宮崎県延岡市生まれ。父甲斐富嘉範士八段の道場(延岡修道舘)で剣道を学ぶ。延岡工業高から国士舘大に進み、卒業後高輪高教諭となる。監督としてインターハイ団体優勝3回・個人優勝2回、国体優勝など。現在、郷里宮崎に戻り日章学園教諭となり、インターハイ団体準優勝・男子個人優勝女子個人3位、国体3位4位など。宮崎県国スポ強化コーチ

 私は平成28年に東京・高輪高を退職し現在宮崎の日章学園中高にて勤務しております。高校生との稽古を重ねながら、自身の稽古に励んでおりました。

 私が指導において一番大切にしているのは、正しい構えから打突することです。相手と緊迫した状態で攻め合っていると、最後は捨て切った技が出せるかどうかがカギになります。そのような打突を出すためには、正しい構えができなくてはいけません。偏った構えだと、最短距離でかつ強く打突を行なうことはできません。

 本校剣道部に入部する生徒は少年剣道経験者がほとんどで、試合技術は高いものの、その弊害で悪癖が身に付いています。その悪癖をなおすように促します。早い生徒は1年ほどでなおりますが、長いと3年かかります。もし卒業後に悪癖をなおそうとすると、専門的に剣道を学ぶ大学は例外として、一般大学であればそこまでの量ができないのがほとんどです。なかなか悪癖をなおすまでに至りません。ですから、高校生の段階で悪癖をなおすことが大切だと感じています。

 正しい構えからの打突は、私自身の修業においても大切にしてきたことでした。

 令和5年11月に八段審査で合格させていただきました。48歳で受審し始めてから年2回の挑戦を欠かさないようにしてまいりましたが、およそ40回の挑戦を経ての合格でした。

 高輪時代は都内に学校があったので出稽古に伺うこともできたのですが、日章学園赴任後はなかなかそのような機会がありません。東京にいるときは「いつか、どうにかなるだろう」と、甘く考えておりましたが、20年ほど年月をかけることになりました。

 宮崎に赴任してから3回目の1次合格で、八段審査に合格することができました。3年前に首を痛め、リハビリをしながら生徒たちと稽古を重ねておりました。それで一昨年の合格の際は、1次審査で相手に胸を借りるつもりで、「打ってくるまで打たない」という気持ちで対峙することができました。あとから動画を見返すと、開始から35秒打っていませんでした。その気持ちのおかげか、相手が出てきた出ばなを打つことができました。2次審査においても、同じような気持ちで立ち合うことができたのが、良かったのだと思います。「打ちたい」ではなく「打たない」我慢ができた、いわゆる無心に入っている状態であったのか、不思議な感覚でありました。のちのち、立合を観ていて下さった先生から良かったと言っていただくことができました。

 出ばなの機会は一瞬です。その刹那にすぐさま反応し、気剣体一致の打突を打つために、正しく構えることの大切さを実感しましたし、生徒たちにも伝えていきたいと考えています。

正しく打つために、正しく握る



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