2013.1 KENDOJIDAI
近年は体育の研究領域において実践研究の重要性を唱える動きが見えつつあります。鹿屋体育大学では動画を用いた実践研究を掲載するウェブ上のジャーナルが発刊され、我々実技教員は実践研究に力を注ぐことが求められています。このジャーナルは、画像データを提供するところにオリジナリティーが存在し、各領域の専門家が共有できる実践知や身体知の創造、蓄積が目的となっています。
私自身、高校での指導経験が長かったため、実践研究は専門指導者に極めて有益な情報を提供するものと考えています。極論を述べれば、一流競技者の養成を試みた場合、科学的な手法により導き出された普遍的な情報よりも、トップ選手の実践事例こそがその域に到達するための重要な手掛かりになると思われます。
今回は、「攻撃を主体とする剣道」の実践に向けた取組について掲載したいと思います。攻撃主体の剣道は、現職場に赴任してから現在まで学生指導上の柱としてきましたが、そう簡単には実践できるものではありません。以下に書き連ねる本大学の取組は、決して確立された指導内容とは言い難い現状にありますが、どうかご容赦願います。
竹中健太郎
たけなか・けんたろう/昭和47年兵庫県生まれ。PL学園高から筑波大に進み、卒業後、鳥取県立八頭高校教諭となる。世界選手権大会個人2位、全日本選手権大会出場、全国教職員大会団体・個人優勝など。平成20年より鹿屋体育大学に赴任。
相打ちで打ち勝つ技を、仕掛け技の主軸にする
現在の職場に移り早くも4年と半年が経過しましたが、赴任当初、本大学の学生の稽古、あるいは試合に非凡な攻撃姿勢を印象付けられたことを思い返します。実際に第三者評価として彼らの攻撃的な試合の様相は、本誌でも過去の大会記事で評していただいています。この攻撃姿勢は、開学から九州の地に根付いた武道課程を有する大学として築き上げられた本大学の剣風であり、鹿体大剣道の特色の一つと私は理解しています。したがって、この攻撃主体の剣道を引き継ぎ、一層強化しつつも質的な内容を洗練させていくことが課題であると心得ています。剣道に関する数多くの指導書に目を通しても、その中身は専ら「攻め、打突」に関する内容が大部分を占めています。「守り方」の詳細について記載されたものは滅多に見受けられないことからも、攻撃の重要性が示唆されます。まさに「攻撃は最大の防御なり」との先哲の教えは疑う余地はないものと考えます。そこで、実戦において攻撃姿勢を終始貫くためには自ら仕掛けて技を出すことが不可欠となるため、先ずはじめに仕掛け技を取り上げてみたいと思います。
ここでは仕掛け技について、各技の打突方法またはそのコツや有用性を示すのではなく、自信を持って攻撃に徹するために必要と思われる技術的な要素や要件について、技の構成・選択に着目して述べてみます。いずれの部位を打突する上でも、実戦における仕掛け技の構成を充分に検討する必要があり、学生への指導では打突の起こりを最小限に抑えたシンプルな打突を仕掛け技の主軸とすることを呼号しています。仕掛けることは、相手側に「出ばな」「応じ」などの打突の機会を与えることにも繋がります。特に自ら仕掛けた打突と同時に相手が技を発動することは充分に予測されます。したがって、相打ちの打突であっても一瞬先に乗り勝つ、あるいは正中線を制して割り勝つ打突を備えていなければ自信を持って仕掛けることはできないものと考えます。つまり、せっかく攻め勝って技を放ったとしても、相手が苦し紛れに手を出した打突に仕止められてしまうような起こりの大きい打ち方が習慣化した選手は、自ら仕掛ける勇気が持てないものと考えます。
面技:乗り勝つ打突、割り勝つ打突
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