剣道の技

適切な間合、絶妙な機会(小関太郎)

2026年3月16日

2025.7 KENDOJIDAI
構成=寺岡智之
撮影=西口邦彦
*本記事に掲載された画像の無断転載・使用を固く禁じます。

昨年5月、待望の八段昇段を果たした小関太郎教士。合格への大きな手がかりとなったのは、「剣先を中心に置いておくこと」に努めたからだという。「機会は無理につくるものではなく、やりとりの中で見えてくるもの」という小関教士に、間合と機会に関する見解をうかがったー。

小関太郎教士八段

こせき・たろう/昭和51年生まれ、千葉県出身。習志野高校から東海大学に進み、卒業後は警視庁に奉職する。全日本選手権3位、全国警察大会団体優勝3回、国体優勝、全日本東西対抗大会出場など活躍。令和6年5月、八段昇段。現在は警視庁剣道師範として後進の指導にあたる。剣道教士八段

網代範士からいただいた金言
「剣先は中心に置いておきなさい」

 このたびのテーマが「間合と機会」ということで、まずは私の八段審査での経験を元にお話しをさせていただければと思います。

 私は昨年5月、5回目の挑戦で八段に合格することができました。今振り返れば、初挑戦のときと合格時の立合はまったく別物になったと感じています。

 1回目は2次審査まで進むことができたのですが、それ以降は1次審査も受からず、自分には何が足りないのかと悩む日が続きました。その道のりの中で大きな転機となったのが、東海大学の恩師である網代忠宏先生との稽古です。

 私はそれまで、強い攻めを意識したり相手の剣先を押さえて牽制したりと、相手を打つことばかりに終始していました。網代先生との稽古でも同じような攻めを展開していたのですが、先生から「剣先は中心に置いておきなさい。相手を追ったり、攻め返したり、自分から押すようなことはしない方がいい」というアドバイスをいただきました。

 このお話しをいただいた瞬間はまだ理解が追いつかなかったのですが、少し見えてきたのが後日の稽古での一幕です。ベテラン剣士の多い稽古会で、どの方も私が強引に攻めて打った技には納得がいっていない様子でした。それが、お互いが合気になって良い機会に出た技は、「参りました」といったようなスッキリとした顔をしてくれるわけです。相手が納得する一本は、独りよがりの強引な剣道からは生まれないんだなと教えていただいた良い機会となりました。

 同時期に、警視庁の平尾泰主席師範から「沈んで調子をとらない方が良い」とご指導いただいたこともありました。これも言葉は違いますが、網代先生と同じことを伝えたかったのだと思います。自分主体で相手とのやりとりをおろそかにした打突は、やはり相手の心には響かないのだなと感じました。

 こういった助言を元に稽古を重ねる中で、相手の剣先に左右されないようにそれまでより少し剣先を高めに構えるようになると、徐々に相手の太刀筋や間合が今までとは違う感覚で見えてくるようになりました。昨年の4月から私も職場での担当がかわり、はじめての方と稽古をする機会が増えたのですが、癖が分からない方とでもよいやりとりができている感覚がありました。その手応えをもって、5月の審査ではここだけを頭に入れて立合に臨もうと思ったわけです。

 合格した立合とそれまでの立合を比べると、一番の違いは手数だと思います。先ほど言ったように、自分本位の剣道をしていると手数はどんどんと増えていきます。反対に、相手とのやりとりを重視し、今回のテーマである間合や機会を丁寧に考えながら攻め合いをしていると、手数は減ります。合格時の1次審査を振り返ってみると、私が出した打突は3回だけでした。その中には手応えの得られた技もあり、これが1次審査合格につながったのではないかと感じています。2次審査も同じような攻めを心がけ、合格をいただくことができました。

打ち間の維持に努めることで、機会は自然と見えてくる



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