2008.11 KENDOJIDAI
私自身、剣先が弱い、剣先を効かして攻めよ、とよく注意されたものでした。剣先力とは、構えによって築かれたバリア(防壁)であり、威圧感を備え、攻め崩しを可能にする力です。地稽古で鍛える剣先力をひもといてみたいと思います。
角正武
すみ・まさたけ/昭和18年福岡県生まれ。筑紫丘高から福岡学芸大(現福岡教育大)に進む。卒業後、高校教員を経て母校福岡教育大に助手として戻り、のちに同大学保健体育講座教授となる。平成19年退官。
身構え、気構えと剣先
剣道の基本は中段に構えることからはじまります。剣先の位置そのものについてはその高さをおよそ相手の咽喉部とし、切先の延長が相手の両眼の間(または左目の方向)に向くようにすると教えています。また、左拳の位置については下腹部へそ前より約ひと握り前に絞り下げ、左手親指の第一関節の高さをへその高さに位置して上から握り、小指薬指中指を締めて竹刀を保持すると教えています。
初歩的段階ではこの構えをとると、躰の面(身幅胴幅腰幅)に対して竹刀はま っすぐ相手に向かい、一つの点(剣先の太さ)に見えたり、線(上から下から見える竹刀の長さ)が見えて、突き刺すような威力を感じさせるものです。
ところが高段位者の中段の構えに対峙してみると、剣先を頂点として奥行きと幅をも感じられる立体のようなものを感じるものです。剣先の高さに着目してみても初歩的には、およそ咽喉部の高さに固定的に位置されますが、修錬を経てくると相手に対応して高さを変化させるようになり、さらには高さにこだわらずに相手を攻め、あるいは相手の攻めを封じるように遣うようになります。
また、左拳を剣先との関係に着目してみても、初歩的段階では左拳と剣先が自己の正中線の延長上に位置して相手に向かうのみですが、修錬を経てくると右足前自然体にしたがって左拳を剣先と顔の中心部とによって形成される三角形の面を感じさせるようになり、さらに身幅をも含む立方体で迫ってくるような感じさえ与え得るようになるものです。
このように剣先の威力は身構えにのみ依拠する段階から気構えが多くを占める段階へと発展していくものと理解しておかねばなりません。
下腹の張りを意識
掛け声の工夫でバリアをつくる
剣先は単なる彼我の間に空間的に位置する点という概念ではなく、竹刀を保持した左拳を起点として先端に至る線およびそれに加えて顔面(目付)や身幅をも含んで構成される面や立体の先端部として認識しておかねばなりません。さらに気構え(気勢)との一体化を図ることによって、相手に威圧を与えて打突の好機(相手の動揺するところ)をつくり出し、または相手につけ入る隙を与え難くするように作用させなければなりません。そこで気構えと剣先について考えてみると、まずは対峙した際に発する掛け声の出し方に着目しなければなりません。掛け声すなわち発声は呼吸法と密接に関連しており、丹田呼吸法によって発声(呼気)にともなって下腹部に張りをつくることが肝要です。
初歩的な段階の人が大きな声を出しますと下腹部をへこませてしまうものですが、はじめは意図的に息を吸い込む際に下腹部を膨らませる訓練をし、その張りをさらに強めるように発声するように訓練するとよいでしょう。そして掛け声を発するたびに「ヘソが上を向く」ような感覚を実感し、腰を入れすぎずに上体を自然にまっすぐに保って「上虚下実」の構えを自得したいものです。
下腹部の張りと左拳の三指(小指・薬指・中指)の締めとの一体感によって、気勢が竹刀を伝って発する感覚を自覚できるようになるはずです。そして右拳の強い握り締めや右腕の力みが、気勢の剣先への伝導を、いかに邪魔をするものなのかを自覚し、「右手は添え手」の教えを自得するようになるでしょう。
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