岩立三郎範士

会場に入る前から審査は始まっている
昇段審査は、第三者(審査員)に自分の剣道を評価してもらうものです。審査員がその段位にふさわしい剣道であると認めなければ合格することはできません。私の道場にも審査合格をめざして通っている方がたくさんいますが、稽古を積むことは当然ですが、審査直前の心得についてお話したいと思います。せっかく稽古を積んだにもかかわらず、本番で実力の半分も発揮できない方がいます。そのような方を見ていると直前の準備に失敗があることが少なくありません。
会場へ行くための交通手段はしっかりと頭に入っていますか。なじみのある会場であれば所要時間などを把握しやすいですが、地方審査に行く場合は注意が必要です。首都圏のように交通網が発達していませんのでタクシーに頼ることもあります。しかし、タクシーもたくさん走っているわけではありませんので、なかなか乗ることができずあわててしまうということがよくあります。
審査に臨むにあたっては、とにかく審査のみに集中できる環境を自分でつくることです。その第一歩が自宅から会場までの交通手段の確認だと思います。
以前、七段審査で合格した山形の方がいますが、一年前に会場まで足を運び、当日のイメージをつくったそうです。なかなかそこまで準備することは難しいと思いますが、いまはインターネットで現地情報は簡単に入手できますので、余計なストレスをつくらないためにも、会場に関する情報は集めておくことにしましょう。
なお防具、竹刀、稽古着、袴の準備は出発前日に必ずしておくことです。信じられない話かもしれませんが、小手を入れ忘れた、稽古着を入れ忘れたという話を少なからず聞きます。
無駄口は控える。
深呼吸で下腹に気を充実させよ
審査当日、会場には遅れないように充分時間に余裕をもって入るようにしましょう。ギリギリになると気持ちが落ち着かなくなるものです。
審査会当日、審査員の私が最初に見るのは、会場内での受審者の態度です。「これから自分の剣道を見ていただくのだ」という覚悟で臨んでいる人は隙のない立ち居振る舞いをしています。懸かる稽古をやり抜いた人のみが醸し出す風格、自信みたいなものが、所作や態度からにじみ出ているものです。
会場で無駄話をしている人を散見します。久しぶりに会う知人もたくさんいるとは思いますが、あいさつ程度にとどめておくのが賢明です。審査に来たのであって、同窓会に来たわけではありません。壁に向かうなど、なるべく人と目を合わさない工夫も必要だと思います。
八段審査に合格したとき、武徳殿でたくさん深呼吸をして心を落ち着かせました。腹式呼吸でしっかり気を下腹に溜め、踵に力を入れて本番に備えることが大切です。
着替えをすませたら着装をどなたかに点検してもらいましょう。稽古着・袴は「襟は首、袴は腰の位置」で正しく身につけていますか。袴は新品のものである必要はありません。洗濯されており、袴の襞がきちんとついている状態のものを用意しているでしょうか。剣道具も正しい位置に着装されているかどうかも見られています。
審査は付添人がいることが理想です。付添人がいれば、着装を最終確認してもらうことも可能ですが、いまは会場係の方に見てもらうこともできますので、着装に関しては審査前に必ず第三者に見てもらうようにしてください。稽古着の背中がふくらんでいる人、手拭いが面からはみでている人、面紐の長さが不ぞろいな人が意外といます。
なお、貴重品の管理には充分注意しましょう。残念なことですが、盗難事件が必ず起きています。
自分の得意技を全身全霊で打ち切り、決めること
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