2026.6 KENDOJIDAI
撮影=西口邦彦
構成=土屋智弘
高段位の審査本番、特に八段審査の突破には、技量のみならず、品格や風格、そして攻めの中から生まれる自然な打突が求められる。日々の稽古の在り方から、本番への心構えに至るまで、剣道の本質に迫る稽古の準備を飛知和教士に伺った。
飛知和利文 教士八段

準備万端に
覚悟を持って臨む
私が副会長を務めさせていただいている神奈川県剣道連盟では、定期的に剣道八段受審者研修会を開催しております。先日行われた研修会では、県連の名誉顧問でいらっしゃる網代忠宏範士が、八段位にふさわしい品格・風格について講義されました。
今回のテーマである本番への準備に通底するものとして、「品格や風格は、その日になって出そうと思って出るものではない」というお話がありました。普段の稽古からの心掛けとして、着装、構え、攻めや打突といった稽古内容を含め、周囲の方々に「あの人は八段だよね」と感じさせるものが、自然と滲み出ている必要があります。
八段審査は、合格率が1%以下という大変狭き門です。つまり、審査会場において百人の中で抜きん出て、誰よりも光るものがなければ合格できない世界と言えます。当日は、自分の持っている力を最大限に発揮し、さらにそれ以上のものが引き出せるよう、万全の準備が求められます。
審査会場で時折お見かけするのは、自分の立合までの間、落ち着かずに待っている方です。そうした振る舞いは目立つだけでなく、いざ立合で実力を存分に発揮することを難しくします。会場に入るまでにしっかりと心を整え、一旦入ったならば覚悟を決めて立合に臨むことが大切です。
気をいただく稽古で
八段位の打突を求める
立合では品格・風格に加えて、攻防の中で相手に攻め勝つこと、打突の機会、姿勢、手の内、残心に至るまで、審査員の先生方は総合的にご覧になっています。受審者は、この一連の流れを噛み砕いて理解し、それをいかに体現していくかを、日々の稽古で磨いていかなければなりません。それらが八段の攻めや打突である必要があり、七段のそれでは通用しないということです。
そうした八段位の有効打突を身につけるには、「打った・打たれた」の稽古ではなく、どのような働きを経て、打突に至るかが重要になります。稽古において、特に上手の先生に掛かる際には、「気をいただく稽古」を求めることが近道であると感じています。
私自身、それは七段受審時のことでしたが、小中沢辰男範士に、毎週のように稽古を付けていただきました。私はひたすら気合を込めて面に跳び込み、先生はそれを応じられます。私はすぐに元の位置へ戻り、再び「ヤー面」と打ち込む。その繰り返しの稽古でした。
ある時、小中沢先生が「飛知和くん、きみは八段を受けるのかね」とお尋ねになりました。その一言で、この稽古こそが正しいのだ、剣道はここに尽きるのだと、何かを掴んだ思いがしました。小手や胴といった技を弄するのではなく、ひたすら気を溜めて捨てて面を打つ。その積み重ねによって、私は先生から「気をいただく稽古」ができたのだと思います。
小中沢先生は武専出身(大日本武徳会武道専門学校)で、その時代の先生方特有の風格が滲み出ていらっしゃいました。そうした気の一端を稽古の中でいただけたことは、剣道の奥義にも通じる、かけがえのない体験であったと感じています。

自然体の中から技を発現
無から有を生みだす
残りの記事は 剣道時代インターナショナル 有料会員の方のみご覧いただけます





No Comments