自分で作る道 連載

夢の実現(クリストファー E・J ヤング)

2020年10月23日
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自分で作る道 :第二回 夢の実現

*この記事はコロナの影響で剣道道場が中止になる前に書きました。
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プレイノ剣道道場を始めることがどれだけの挑戦で、そしてどれだけの時間と労力が必要なのか私はわかっていませんでした。最初の一歩を踏み出すために、どれだけの信念と勇気が必要なのかも。

2018年6月、プレイノ剣道道場がオープンしてからほぼ1年半が過ぎました。しかしテキサスで剣道道場を始めるという私の夢は何年も何年も前から始まっていたように感じます。

2014年4月28日のこと。それは私がニュースを開いて”Bad news coming from Toyota in Torrance on Monday(トヨタに関する月曜日のバッド・ニュース)”と題された記事を目にした日のことです。 私が勤める北米トヨタ自動車が、今後3年以内に北米本社全体を私の故郷であるカリフォルニア州トーランスからテキサス州プレイノに移転することを知りました。

「テキサス州プレイノってどこだ?!」そう、私も同じ反応でした。グーグルマップで “Plano, TX(プレイノ テキサス) “と検索し、その街の正確な位置と、どんな雰囲気かをGoogleストリートマップで理解しようとしたことを覚えています。 私はカリフォルニア州トーランスで生まれ育ちました。数年間ワシントンDCで法律学校に通っていた以外は、ずっとトーランスが故郷だと思っていました。生まれ育った場所から数分の場所に家を購入し、トーランス剣道道場で剣道を始め、30年以上前稽古をしてきました。 それまでトーランスを離れようと思ったことは一度もありません。

このニュースを知ってから3年間は、テキサスへの引っ越しに向けて精神的な準備に費やし、あっという間に過ぎていきました。 どこに住むのか、息子はどこの学校に通うのか、トーランスにあったものを根こそぎ捨てて、新しい場所に引っ越すことで、私たちの生活はどう変わるのかなど、不確実と不安でいっぱいの3年間でした。 日本とは違い、カリフォルニアからテキサスに引っ越すことは新しい国に引っ越すのと同じぐらいインパクトがあります。時差も二時間あり、食べ物、習慣、言語、そして何よりも「Diversity」(人衆のミックス)など、テキサスはカリフォルニアと真逆と言ってもおかしくないです。

そんな中、心の奥ではいつも剣道のことが気がかりでした。 仕事のためには外国まで引っ越しましたが、自分の純愛は剣道です。自分の剣道をどうやって維持していくか、息子にどうやって剣道を教えていくか。また、剣道の環境についても考えていました。トーランス道場が位置する南カリフォルニアには20以上の道場があり、おそらくアメリカで最も剣道人口が多い素晴らしい剣道環境を誇ります。それをどうやって再現していくかも考えていました。

2017年6月、我が家はついに、テキサス州プレイノにあるトヨタ本社のすぐ隣の大都市ダラスに引っ越してきました。 ダラスやプレイノなど多くの都市を含む巨大なダラス/フォートワース地域の人口は680万人を超えていますが、当時は地域全体に1つの道場しかありませんでした。剣道人口は50人以下と思われます。

テキサスに引っ越す前は、まさか自ら道場を開こうとは思ってもいませんでした。なので、引っ越して間もなくダラスの近くにある道場を訪れ、この道場に通って剣道を続けようと思っていました。この道場の誰もが非常に暖かく歓迎していただき、親切にしてくれました。 しかし、30年以上稽古し、私が「ホーム」と感じていたトーランス道場とは、全てが異なっていると感じてしまいました。

準備運動のメニューから、稽古内容から、気合の出し方から、床まで全てが違う!「当たり前だろ!」と思う人もいるかもしれませんが、なぜか剣道に対するモチベーションや情熱に大きな影響を与えてしまいました。 最初は週に2回、次に週に1回、そして2017年の終わりには全く行かなくなっていました。 剣道をしたいというファイアが人生初めて消えそうになりました。何かを変えなければならないと思いました。

第三回に続く。

クリストファー E・J ヤング

1978年8月生まれ。トーランス剣道道場にて剣道を8歳で始める。カリフォルニア大学バークレー校(2000)とジョージタウン・ロースクール(2003)卒業。大学時代は筑波大学に留学し、筑波大剣道部入部。現在は北米トヨタ自動車のVice President、北米トヨタコネクテッドのGeneral Counsel. 世界剣道選手権大会には1997年(京都開幕)で初出場、2015年に開幕された16回世界大会まで7大会連続で出場、団体戦二位(2回)・三位(3回)・個人戦ベスト8(2回)・敢闘賞(7回)を記録した。剣道教士七段。

翻訳 = 佐藤まり子

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1 Comment

  • Reply 道場の成長(クリストファー E・J ヤング) | 剣道時代インターナショナル 2021年1月3日 at 2:02 PM

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