2025.1 KENDOJIDAI
取材=寺岡智之
写真=笹井タカマサ
阿比留宏貴(あびる・ひろたか)
平成13年生まれ、東京都出身。4歳時に福住剣友会で剣道をはじめる。深川第二中学校、明大中野高校を経て法政大学に進学。高校時代はインターハイ個人3位、大学時代は全日本学生優勝大会で主将としてチームを30年ぶりの日本一に導く。令和6年度よりNTTに入社。1年目から大活躍を見せ、同社の関東・全日本実業団大会連破の立役者となった。剣道四段
「自分に回してくれれば全部勝ちますから」
チームメイトとの円陣でトレードマークの笑顔をたたえながら、強気発言でチームを鼓舞したのは阿比留宏貴選手。今春法政大学を卒業し、NTTで実業団剣士としての道を歩みはじめた新鋭だ。明大中野高校でインターハイ個人3位の結果を残し、法政大学へ進学。大学4年時には主将としてチームを牽引し、30年ぶりとなる大学日本一の立役者となった。
そんなニューカマーにいきなり訪れた千載一遇のチャンス。第66回全日本実業団剣道大会において、阿比留選手の所属するNTT大手町チームは決勝の舞台に立っていた。同チームは前哨戦となる関東大会も制し、優勝候補の一角として挙げられていた。
「まったく緊張するところはありませんでした。トーナメントを勝ち上がる中で調子も上がってきていましたし、今日は負けないなと自信をもって決勝に臨むことができました」
実業団日本一をかけて戦う相手は三井住友海上。本大会で過去何度も優勝を勝ち取っている強豪だ。試合は一進一退の激戦となり、同点同本数のまま大将戦へともつれこむ。NTTとして4大会ぶりとなる優勝の行方は、阿比留選手の双肩に託された。
「あの日は自分の中で〝相手を圧倒する〟というテーマを設定して試合に臨んでいました。どんな状況でも二本を取りに行こうと。決勝でもその気持ちはまったくブレなかったと思います」
試合は一瞬だった。勝負強さに定評のある本間渉選手を相手に颯爽と胴を決めて先制すると、二本目も瞬く間に小手を決める。チームの仲間も驚くほどの快勝劇で、阿比留選手はNTTにビッグタイトルをもたらした。
社会人1年目にして、関東・全日本実業団を連破し、大目標を達成してしまった阿比留選手。優勝は「素直にうれしい」と顔をほころばせるが、本当の目標は別のところにあるという。
「全日本選手権と世界選手権で優勝することが、私の剣士としての目標です。だから今回の優勝で満足することはありません。今回の優勝をさらなる自信に変えて、二つの大目標達成に向けて精進していきたいです。日本代表合宿に呼んでもらえますかね?」
剣道に対する想いを変えてくれた
良き指導者との出会い
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