KENDOJIDAI 2021.8
戸塚道場では足さばきに特化した合宿を実施するなど、足さばきの習得にじっくりと時間を割いている。戸塚道場実践10種類の足さばき稽古法を紹介する。
撮影=西口邦彦
子どもは真似て学ぶ
その土台となるのが足さばき
子どもは、大人の指導内容から学ぶものよりも、強い子を見て、真似て覚えて、自分のものにして行くことの方が多いように思います。真似ることが出来るかどうかは、子ども自身の足さばきに掛かっていると考えています。
強いチームや道場には核となる強い子どもがいます。その子に憧れ、真似ていくことでチームや道場全体のレベルアップが自然と行われているように感じています。
経験として、指導者が語ったことを子どもが理解をして強くなったというケースは、ほんのわずかであり、少年剣道においては、子どもが真似るために必要な、土台となる足さばきを最優先して教えていくべきだと考えています。
足さばきの稽古は単純な動作の繰り返しです。よって、
どのような場面で使うのか?
それは何故そのように指導をするのか?
という理由を説明する事が重要だと考えています。
足さばき上達のためには、足が速くなる事が条件だと考えるため、戸塚道場の準備体操は「足が速くなるダンス」を実施しています。
本ダンスで半年後、子ども達の足が速くなったという統計が出ており、戸塚道場では3年前から取り入れています。また、足を細かく早く動かすためにラダートレーニングを取り入れており、最近リニューアルしました。
過去、2泊3日の合宿を行ったとき、剣道着や防具、竹刀は持参せず、ジャージと靴下のみ(マメが出来る事を防止)で全ての行程を足さばきだけのメニューにしたことがあります。ジャージのため、足さばきが指導者から良く見えて短期間で足さばきの課題を修正できました。
足さばきは、地道にトレーニングを継続する事で上達可能です。上達とともに足が速くなり、保護者から「運動会で1位になれました」という嬉しいお声をいただく事もありました。
現在は、コロナの影響で稽古時間も制限されていますが、コロナ前の日曜日は足さばきの日と設定し、今回紹介する足さばき稽古に加えて左足前の足さばき、斜め左右の足さばきなど、様々な足さばきを取り入れ、最後はすり足鬼ごっこで稽古を締めていました。
このすり足鬼ごっこが、足さばき稽古の中で一番効果があると感じています。子どもが自発的に足を動かしてくれ、瞬時にコース変更の判断、反応をしてくれます。このすり足鬼ごっこで最後まで逃げ切れる子どもは、大体同じ顔ぶれになり、その子は剣道においても良い結果を残す傾向にあり、かつ足の速い子どもである事は言うまでもありません。補足として、すり足鬼ごっこで鬼が捕まえる瞬間は左手でタッチ、タッチの瞬間踏み込みを入れるなど剣道に特化したゲームにしています。
今後、将来的に剣道を楽しく継続していくためには足さばきは欠かせない稽古であると考え、子どもの頃に身につけた足さばきは一生使えるものにしたいと考えています。
足さばき1
1歩1歩ゆっくり正確な足さばき
【指導のポイント】
左足裏のどの部分に力を掛けるか、右足の踵を付けない、左足は、床をすらないで素早く引き付ける。
【効果】
正確な足さばきが身に付く。他の足さばきが出来るようになるための基本中の基本。
足さばき2
細かく早くすり足
【指導のポイント】
歩幅をきめて、細かく早く足を動かす
【効果】
いかなる場面でも素早く対応出来る身のこなしと、繰り出す技のスピードも向上する。
【補足】
当道場で一番拘っている練習。左足が必ず右足の後ろに来るように指導し、特に切り返しや打ち込みの打突後、細かく早く流れるような、すり足をするよう指導している。
足さばき3
すり足の途中で踏み込み
【指導のポイント】
踏み込んだ瞬間、思い切りジャンプさせる事で左足を自動的に引き付ける。
【効果】
試合で相手が下がったところを追い込んで打突する場面や引き技を出した時の跳ね上がりに効果がある。
足さばき4
細かく早くすり足で笛の合図で前後に足さばきの切り替え
【指導のポイント】
前後に足さばきの切り替えを早くする事を要求
【効果】
相手の動きに対し、素早く対応できる能力の向上(素早く追い込む、交わす等)、細かく早くすり足をしている最中に笛を鳴らし、その音と同時に下がる。次の笛で前に…と笛の合図で前後に素早く切り替える練習。
足さばき5
細かく早くすり足からターン
【指導のポイント】
打突後(打ち抜けた後)の残心を素早く取るため、親指でターンする。
【効果】
打突後、振り返った瞬間に打たれない、または振り返った瞬間に打突出来る足を作る。細かく素早くすり足の中から笛の合図でターンをする。バレリーナのように綺麗に回転をするようにする。
足さばき6
左右の細かく早いすり足
【指導のポイント】
歩幅が大きくなりがちな練習のため極めて細かい足さばきを要求。
【効果】
ライン際での身の交わし、間合いに入る際の横の動きを取り入れ攻め方にバリエーションが増える事。
【補足】
左右の細かく早いすり足の練習。この練習で多くは足が乱れ、右足前の形が崩れ、歩幅が大きくなりバウンドをしながらのすり足になりがちなので、そこを留意し指導を行っている。
足さばき7
8の字のすり足
【指導のポイント】
細かく早く足を動かす事。大きく円を描きながらすり足を行う。
【効果】
ライン際の身のかわし。あらゆる体勢でも右足に左足がついてくる。
足さばき8
笛の合図で一歩踏み込み、すぐに右足を上げ左片足で立つ
【指導のポイント】
しっかり踏み込み、素早く左足を引き付けて、左足重心を身につけさせる。
【効果】
素早い左足の引付から次の打突への準備が出来る事。
足さばき9
引き面の足さばき
【指導のポイント】
両手を顔の前に構え、笛と同時に次の順で動作を行う。①手を叩きながら踏み込み、②その後は両手を天井に向けて伸ばす。③後方へのすり足。
【効果】
ノーモーションで引き技を瞬間的に出せるようになる。チャンスを感じた時に反応が出来るようになる。
足さばき10
すり足鬼ごっこ
【指導のポイント】
必ずすり足で逃げる、または鬼はすり足で追いかけさせる事で本能的に素早く足を使わせる。
【効果】
ゲーム性の高い練習で楽しみの中に本人が持っている最大の力を思わず出してしまう要素があり、試合中も相手の動きに対して反射的に反応が出来るようになる。
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