剣道の技

一拍子で打つ技術(林田匡平)

2025年8月18日

KENDOJIDAI 2025.8

撮影=西口邦彦

林田匡平選手は全日本選手権2位1回、3位2回、教職員剣士として圧倒的な実績を持つ。「一拍子で打つというテーマは島原高校入学後、徹底的に教えられたことです」と振り返る。本年4月、母校島原高校に戻った林田選手に、自身の経験から取り組む一拍子で打つ要領を語ってもらった。

林田匡平 六段

はやしだ・きょうへい/平成6年長崎県生まれ。島原高校から筑波大学へ進学し、卒業後は福井県で教員となる。全日本選手権大会2位、全国教職員大会個人優勝3回、国体3位などの実績を残す。本年4月より母校島原高校の教員として後進の指導にあたる。

 本年3月、福井県立丸岡高校の教員を辞し、4月から母校長崎県立島原高校の教員として生徒の指導、そして競技者としても日本一を目指すことになりました。

 今回のテーマである「一拍子で打つ」ということは、15年前、わたしが島原高校に入学した際、監督の渡邉孝経先生が掲げられた指導方針でした。中学校を卒業したばかりでしたが、私なりに「構えたときの重心」「竹刀の振り方」「左足の運び方」、この三つをどの稽古をするときにも意識して繰り返すようにしていました。島原高校の稽古は素振り、切り返し、打ち込みとシンプルな内容であり、自分で工夫・研究して行わないと、ただ惰性で稽古を繰り返すことになります。

 一拍子は『剣道和英辞典』で「竹刀操作と体さばきを一致させ、それが一呼吸で行われる打突動作」と説明しています。剣道には攻めて崩して打ち切るという手順があり、それを実現するには一拍子で打てる技術を身につけていなければなりません。実戦では奇襲的にタイミングを変えて打つこともときに必要ですが、そのような技は、正攻法な技があるからこそ生かされると考えています。

 私自身、稽古ではシンプルな面技の習得にとくに時間を割いています。新型コロナウイルス感染拡大の状況下、だれもが思うような稽古ができない期間が続きました。このとき、自分の剣道を見つめなおすことにしたのですが、構えや竹刀の握りを点検・修正してより面技を主体とした剣道を求めるようになりました。その結果、第69回全日本剣道選手権大会では決勝戦まで勝ち進むことができ、この大会で取った有効打突のほとんどは面であったと記憶しています。

 面技が打てなければ、どんな選手でも最後は壁にぶつかってしまうと感じ、前任の丸岡高校では面技を主体とした剣道を指導していました。高校卒業後も大学、一般社会で長く剣道を続けてもらいたいと考えたからです。一流選手はわかっていても打たれてしまう面技を体得していますし、それが一流選手である所以であると思います。

左足に重心を乗せていつでも打てる構えをつくる

 コロナの自粛期間でまず見直したのが構えでした。見直す前は竹刀をきっちりと握っていました。その方が臨機応変な竹刀操作ができると考えていたのですが、この握り方ですと〝当てる〟ことはできても、〝打ち切る〟ということはできないと感じました。

 竹刀操作は肩・肘・手首の順番で動かすことが大切ですが、握りが強いとそれができません。そこで現在は両手ともに柄を包む程度で、引っ張られれば竹刀がスポッと抜けてしまうぐらいの力で握るようにしています。

 実戦では打ちたい気持ちが強くなると、どうしても竹刀を握りしめてしまいます。そうならないためにも〝包む程度〟という感覚を大事にしています。

 また足構えについて、左足はいつでも打てる状態をつくるように心がけています。それには左足に重心を乗せておくことが必要不可欠ですが、間合を詰めたり、さばいたりする際、重心が乗らない時間が生じます。その時間を極力つくらないように細かい足さばきを意識しています。

 とくに左足の母指球に体重を乗せることを意識し、左腰を意識して構えています。左腰が開いてしまうと、冴えのある打突を出すことができませんので注意しています。



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