ヨーロッパ

4半世紀以上続く剣道大会。運営者の想いと子供達が剣道を続ける理由。

2019年12月19日
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2019年11月9日(土)ドイツ・デュッセルドルフにて『デュッセルドルフ国際交流少年剣道大会』が開催されました。

今回は4か国、15道場から100名が参加。6才から18才までの少年少女剣士たちが技を競い合いました。 今年で27回目の開催を迎えた本大会はどのように運営され、子供達はどんな想いで大会に参加するのでしょう。

本記事では、4半世紀以上も続く本大会の運営のポイントや選手たちへのインタビューをご紹介していきます。海外で試合を運営する方々にとって参考や励みになれば幸いです。

試合運営で工夫しているポイント、苦労していること

まずは試合運営をするにあたって工夫しているポイントや、苦労していることについてJCD e.V. Kendo Club事務局長の橋本さんに伺いました。

● 27年大会を運営してきて、三国大会はいまどういう状態なのでしょうか?
「本大会は、1993年にデュッセルドルフ少年剣道クラブ(当時のクラブ名)、ベルギー ヘントのコジカ道場、オランダ アムステルフェーンの錬心塾の3クラブの対抗戦を始めたことに端を発します。当時は2月オランダ、5月ベルギー、11月ドイツの年3回持ち回りで三国大会を運営していました。

2月オランダのフルヤカップは残念ながら続いていませんが、当大会のほか5月にベルギーで開催されるコジカカップは継続して開かれています。」

● 大会を運営するにあたって工夫なさっていることはありますか?
交剣知愛の精神で、子供たちが互いに仲良くなれるような機会になることに重きを置いています。
また、個人の試合の機会(出場回数)が少なくなりすぎないように、かつ公平になるように対戦表を組んでいます。特にチームを作れない道場の選手でもMIXチームを組成することで団体戦も経験できるように配慮しています。」

実際、本大会では3人制のジュニアの部の多くはMIXチームでした。また、試合後には勝った選手も負けた選手もすぐに挨拶を交わしており、その姿からは相手に感謝し交流を深めようとする「交剣知愛」の精神を感じます。ベルギー若駒剣士会の黒木選手は「他のクラブの子に会えるのも大会の楽しみの一つ。ヨーロッパ大会など大きな大会で普段試合をしている剣友と顔をあわせると嬉しい気持ちになる」と語りました。

試合後に挨拶を交わす選手

また、他国の少年少女剣士たちが一同に集まる機会は多くありません。せっかくの機会なので、最後に合同稽古が出来るようにスケジュールを調整しているそう。試合時間も2分と短めに設定され、勝敗が決しない場合は判定(準決勝・決勝は除く)だったため、試合運びもスムーズに感じました。

試合後は、審判の先生方が元立ちに立って合同稽古会が行われた

● 逆に苦労なさっていることはありますか?
「各道場、子供の数が減少していることに悩みは共通していると思います。

でも、このような試合の機会が無くなると、ますます剣道人口が減ってしまうのではないかと思い、関係者は頑張って続けてきました。4半世紀以上続くというのはこれまでの関係者の努力の賜物だと思います。」

参加する道場や選手の数は一時期は大きな広がりを見せましたが、ここ数年は100~120名くらいの参加者数で推移しているそう。前日から宿泊しているご家族や、早朝に家を出て参加したご家族も少なくありません。試合参加のための保護者の方々の努力や、少しでもスムーズに試合を運営し、合同稽古や交流を促進しようとしている運営者の方々の想いを感じずにはいられない1日でした。

子供達が剣道を続ける理由

ではここからは、実際に参加している少年少女剣士たちが、どのような気持ちで剣道と向き合い、稽古をしているのかについてご紹介していきます。

今回、イギリスから唯一参加したWakaba道場の塚田さんご一家。お子さんが剣道を始めたのをきっかけにお父さんも剣道を始めたそう。お兄さんにとっても剣道は楽しく、弟さんにとっては「勝てることが楽しい」とのこと。

ご両親としては、「剣道を通して礼儀や相手を敬う心が身についてほしい」そうです。大人から剣道を始めたお父さんも、剣道の魅力として「精神や規律、集中力」を挙げていました。

個人戦カテゴリCで優勝、団体戦もお兄さんたちとチームを組みジュニア三人制の部で優勝した小林くん。兄弟三人とお父さんが剣道をしているそう。お父さんは、末っ子の宗一郎くんが剣道を始めるタイミングでご自身も稽古を開始しました。

今回の大会では、家族・兄弟で剣道をしている家族が多いように感じました。また、お名前が日本名でも、現地育ちで現地の言葉で話す子供達も少なくありません。なかには、ご家族の仕事の都合でいっとき滞在しているご家族もいらっしゃいますが、多くの方はその国で生まれ育ち剣道をしてきたようです。

現在14歳のフィン選手は、7歳から剣道を始め、試合にもこれまでたくさん参加してきたそう。フランクフルトのkatana道場で稽古をしており、剣道を始めたきっかけは、剣道経験者の親戚の方に「向いているのでは」と勧められたこと。
お母さんは、それまで剣道の存在を知らなかったそうですが、今では「剣道のディシプリンや他人に対してどのように振る舞うかという精神に魅力を感じている」そうです。また、剣道をすることで子供の自信にもなるのではと語っていました。

大所帯が目を引いたベルギーの若駒剣士会。代表の黒木先生が、少年少女剣士のために作った道場です。大人も所属していますが、子供の育成をお手伝いいただくということをコンセプトに運営なさっているそう。若駒剣士会の北嶋くん、阿部くんはもう5-6年剣道を継続しており「剣道は楽しい。もっと強くなりたい」そう。年長者が小さい子供の面倒を見て、テキパキと動き回っている姿がとても印象的な道場でした。

最後は、オランダのクイント選手です。18才のクイント選手は、本大会への出場は今年が最後。インターネットで自分で検索して剣道を見つけたそうです。もともと日本にも興味があり、他の競技と違い他者へのリスペクトを重んじる点や生涯を通して続けられる点に魅力を感じたそう。「剣道には、ゲーム以上の楽しみがある」と試合後語りました。昨年と比較すると大きな成長を見せており、今後の活躍が楽しみな選手です。

以上が本大会のレポートです。
大会全体を通して、運営の方々だけではなく選手や保護者の方々も、礼儀正しく素早く振る舞い、参加者それぞれが気持ちよく参加できた大会だったように感じました。

次の大きな試合は、5月にベルギーで開催予定の子鹿カップ。剣道時代では、今後もヨーロッパ少年少女剣道の現場についてレポートして参ります。知見を発信することで、少年少女剣道の発展に寄与できればと思っております。レポートや記事は通常有料ですが、これらの記事は無料で開放いたします。

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