インタビュー

全日本選抜剣道八段優勝大会 優勝インタビュー(鍋山隆弘)

2026年7月6日

2026.8 KENDOJIDAI
撮影=笹井タカマサ
*本記事に掲載された画像の無断転載・使用を固く禁じます。

いまなお世代のトップランナーとして走り続ける鍋山教士。幾多の激戦を乗り越え、ついに全日本選抜剣道八段優勝大会を制した。競技者として頂点を追い求めながら、指導者としても多くの剣士を日本一に導く存在。その強さは、どこから生まれるのかー。

鍋山隆弘

なべやま・たかひろ/昭和44年福岡県生まれ。PL学園高校から筑波大学へと進学し、大学卒業後は大学院を経て教員の道へ進む。筑波大学剣道部男子監督、筑波大学体育系准教授。体育スポーツ学博士。世界剣道選手権大会出場2回、全日本剣道選手権大会出場10回、国体優勝、全国教職員大会優勝など。全日本選抜剣道八段優勝大会は4回目の出場で頂点に立った。剣道教士八段。

北海道インターハイ以来
39年ぶりの個人タイトル

 既報の通り第24回全日本選抜剣道八段優勝大会は茨城県代表、筑波大学准教授の鍋山隆弘教士が初優勝を果たした。教員勢の優勝は4人目(山中茂樹・谷勝彦・栄花英幸)、大学所属の教員では初の快挙だ。

「筑波大学卒業の先輩では谷勝彦範士が本大会で初めて頂点に立たれ、前身となる明治村剣道大会では岡憲次郎範士(元国際武道大学学長)が優勝されています。個人戦のタイトルは高校3年のインターハイ以来ですので、純粋に嬉しいです」

鍋山教士が剣道界に鮮烈なデビューを飾ったのは昭和61年度玉竜旗剣道大会(1986年)と言っていいだろう。2年生ながら強豪PL学園の大将をつとめ、阿蘇との決勝戦を大逆転で制し、遠来組として2度目の玉竜旗を手にした。いまでこそ九州勢以外で玉竜旗を手にする高校が増えたが、当時、関門海峡を越えて玉竜旗を手にしていたのはPL学園のみだった。翌年の北海道開催のインターハイでは超高校級の鍋山教士は注目の的となり、大きなプレッシャーのなか、見事、個人・団体優勝を果たした。

「予選リーグから注目していただき、期待されていることは高校生ながら理解していました。結果として個人・団体戦で優勝することができ、その後の剣道人生が広がったように感じています」

 鍋山教士はPL学園卒業後、筑波大学に進み、大学院修了後、母校筑波大学の教員となる。世界剣道選手権大会出場2回、全日本剣道選手権大会出場10回など、常に世代をけん引する活躍を続けている。八段取得後は地元茨城国体優勝、全国教職員大会団体優勝など活躍を続け、令和8年度玉竜旗高校剣道大会では、大会スペシャルアンバサダーを委嘱された。

「私の剣道人生に大きな影響を与えてくれた玉竜旗を応援できることは、大変光栄です。玉竜旗が世界からも注目される大会となるよう、その認知度をさらに高めていきたいと考えています」

八段戦は有効打突7本
早い仕かけで勝ち切る

 八段戦に初出場したのは令和3年、第19回大会のときだった。決勝戦まで勝ち進み、北海道の教員栄花英幸教士(現範士)に敗れるも、準優勝に輝いた。

「前年度の八段戦がコロナで中止になり、1年間、ほとんど稽古ができない状況での試合でした。膝の故障もあり、蹲踞もままならず辞退することも考えていましたが、11月から延期されて3月に開催された全日本選手権大会で現役生、卒業生たちが活躍したこと(優勝・松﨑賢士郎選手、準優勝・村上雷多選手、3位・星子啓太選手、林田匡平選手)に刺激を受け、出場を決意しました」

 これまで八段戦は3回出場して準優勝、3位、ベスト8とコンスタントに成績を残している。ここ数年、八段戦はどの選手も5回出場を機に、選出から外れている。頂点をめざすために与えられたチャンスはあと2回だった。

「小学校2年から剣道を始めて、試合中心の剣道人生を送ってきました。全日本選手権に区切りをつけてからは個人戦に出る機会は激減し、いつしか個人戦はこの八段戦が最後となり、自然と悔いを残さないような試合をしたいと考えるようになりました」

 迎えた第24回大会、1回戦は馬場健治教士(岡山)と対戦した。

「今回は粘って試合をするのではなく、試合時間の5分で決着させるつもりで臨みました。膝も完治したわけではなかったので、無理に打突するとケガにもつながりますので、いま自分の持っているものをすべて出し切ることを考えていました。1回戦、延長戦で馬場先生に出ばな面を打つことができましたが、途中、面を読まれて胴を打たれました。八段の先生方の読みの精度は高いので、不用意に打つことはできないと気が引き締まりました」

 2回戦は岩切公治教士(千葉)、3回戦は堤幸司教士(大分)を破ってベスト8に進んだ。身体が自然に反応した。

「今回は〝出ばなを狙う〟ということにテーマを絞り、勝負しようと考えていました。出ばな技は気持ちが引いていては待って打つことになり、成功しません。圧力をかけながら相手を引き出すのが出ばな技の絶対条件であり、そのことは学生にも話しています」



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