2026.8 KENDOJIDAI
取材=寺岡智之(男子)、栁田直子(女子)
撮影=西口邦彦、栁田直子、佐藤まり子
剣道のさらなる国際的普及と発展を目的に、アジア・オセアニア剣道連盟が設立された。第1回アジア・オセアニア剣道選手権大会は、その記念すべき主要事業として開催された。日本代表は男女団体戦、男女個人戦の4部門に出場。世界へ広がる剣道の現在地と、日本剣道の真価が問われる舞台となり、日本が男女4部門で完全優勝を果たした。
男子団体
宿命の日韓対決を制し、日本が初のアジア王者に輝く
初開催となったアジア・オセアニア大会。これまで日本剣道界は世界選手権を〝負けられない戦い〟と位置付けてきたが、このアジア大会も同様に、世界の剣道をリードする立場として負けられない戦いとなる。とくに第1回大会ということもあり、日本選手団には世界選手権に勝るとも劣らない緊張感が漂っていた。
今大会の男子日本代表は9名。竹ノ内佑也選手、星子啓太選手、松﨑賢士郎選手といった国際大会経験豊富な選手に加え、前回の世界大会メンバーであった宮本敬太選手や大平翔士選手、木村恵都選手も順当に代表入りを果たした。新たな顔ぶれとしては、神奈川県警の中心選手である真田裕行選手、大阪府警の特攻隊長を務める清家羅偉選手、そして国士舘大を卒業したばかりの新鋭・中田竜之介選手も代表枠をつかみとった。
日本は中国との緒戦を5―0で快勝すると、マカオ、台湾と下して決勝の舞台へと進んだ。中核を担う松﨑選手、星子選手、竹ノ内選手は全試合出場。その他のメンバーも代わる代わる出場し、すべて二本勝ちで圧倒的な力を誇示する結果となった。
そして大方の予想どおり、トーナメントの真裏からはライバル・韓国が勝ち上がってきた。韓国代表の最大トピックと言えば、チョ・ジンヨン選手の代表復帰だろう。2018年に韓国で開催された第17回大会では、当時キャプテンを務めていた安藤翔選手と激闘を繰り広げた。2024年のイタリア大会ではメンバーから外れていたが、経験も実力も充分なことは疑いの余地なく、日本にとっては恐い選手が戻ってきたということになる。
韓国もモンゴルとの緒戦をすべて二本勝ちで勝利すると、カザフスタン、タイと撃破して決勝進出。タイとの準決勝ではチョ選手がシイ選手に敗れるという波乱もあったが、この1敗が韓国チームの気持ちをさらに引き締めたことだろう。

韓国が粘りを見せるも
日本が4―0で初代王座に就く
続きを読む: めざすは国際的普及と発展(第1回アジア・オセアニア剣道選手権大会)
初開催の本大会でアジアの覇権を握るのは日本か、それとも韓国か。日本代表は先鋒・清家選手、次鋒・真田選手、中堅・星子選手、副将・松﨑選手、そして大将・竹ノ内選手という布陣で大一番の舞台に立った。
先鋒戦は清家選手が勢い充分の試合ぶりでクォン・オギュ選手を追い詰める。中盤に体をかがめながら鋭いコテを放ち一本。その後は上手に凌ぎ切って日本が先行した。次鋒戦は真田選手とイ・ヨンウク選手の対戦。真田選手は国際大会初出場とは思えぬ豪胆ぶりで、遠間から伸びのあるメンを何本も放ちイ選手を脅かす。そのメンからさらにコテにつなげて一本を先制すると、今度は下がりつつイ選手を引き込んで出ばなにメンを打ち二本勝ち。日本が2連勝でアジア大会初優勝に王手をかけた。
しかし、これまでの世界大会で何度も経験してきたように、韓国はこのままでは終わらない。中堅戦でキム・ヒョンヨン選手が現・日本王者である星子選手に引き分けると、副将戦ではチョ・グァンヒョン選手が松﨑選手にメンを打って先行。日本にとってはわずかに暗雲垂れ込める流れとなったが、ここは松﨑選手が意地を見せ、メンを二本奪い返して日本の優勝を確定させた。
大将戦も竹ノ内選手がチョ選手に先制される苦しい展開となったものの、この試合も日本を取り返して逆転勝利。終わってみれば4―0と韓国の追随を許さず、日本がアジアチャンピオンの座に就いた。
女子団体
日本女子の壁は厚かった
16チームが参加した女子団体戦。決勝へ勝ち上がったのはやはり、日本と韓国だった。
日本は松本智香主将を中心に竹中、妹尾、水川といった世界大会を経験している4選手と、大阪府警の藤﨑・大嶋、そして全日本女子選手権者の諸岡という鉄壁の7名で臨み、タイ、マレーシア、シンガポールをそれぞれ5―0で下して決勝進出。対する韓国は、緒戦のチャイニーズ・タイペイ戦で先鋒戦を先制され、副将戦、大将戦で勝利し逆転。激戦を乗り越え体もほぐれたか、ベトナムに5―0、現在盛り上がりを見せているオーストラリアに4―0で勝利、決勝の舞台を踏んだ。
先鋒戦はチームの最年少同士・水川選手とキム・ユジョン選手の対決。ともに今年24歳。勝負はいきなり動いた。キム選手が立ち上がりからメン、さらに振り返ってメンと激しく攻め立てたところ、水川選手が体を後ろにさばいて引きメン。いきなりの一本に会場はどよめく。しかし取られた側のキム選手も落ち着いて試合をすすめ、遠間から一歩入り、水川選手が後ろにさばいて避けようとしたところにメンを叩き込んで一本とする。その後、キム選手のドウ、水川選手の引きメン、ツキなど惜しい技が散見される中、終盤、キム選手が跳び込みドウを放ったところで水川選手が瞬時に体をさばきながら引きメン。旗が三本。日本が貴重な先制点を獲った。
次鋒戦、国際大会デビューの諸岡選手。今年27歳。対するシン・ドンア選手はキム・ユジョン選手と同じく最年少24歳。立ち上がりから両選手ともに果敢に打ち込んでいく、激しい展開。開始1分過ぎ、諸岡選手が一足一刀の間合から豪快なメンを決めて一本。
がぜん有利となった日本だが、油断は禁物。とくに日韓戦では、王手をかけた場面は「危ない」と言われる。韓国側が死に物狂いで取りに来ると同時に日本側にプレッシャーが強くかかり、もっとも一本を奪われやすい状況だからだ。実際、過去の世界大会男子団体では2勝した後で取り返される展開が何度かあった。ただ、日本中堅・竹中選手は2024世界大会でも同じポジションをつとめ引き分けに持ち込んでおり、冷静な判断が光る選手。きっちり引き分け副将につないだのはより勝利へ近づくたしかな判断力の賜物だった。
副将戦は松本主将が登場。韓国はキム・ソヨン選手。韓国最高峰の実業団大会で個人・団体ともに優勝の経験をもつ有力選手だ。引きメン、メンと激しく攻め立てたが、松本選手も2018、2024と世界大会団体優勝、鍛え上げられた名選手。試合中盤、ぐっと中心を押さえながら攻め入り、崩れた一瞬を逃さずメンを打つと旗三本が上がった。最後は、終盤、キム選手がメンの勝負に出たところを合わせてコテを決め、日本の優勝が決まった。
日本女子チームは、竹中監督以下、指導陣によって「対外国選手戦略」を研究してきており、その成果が遺憾なく発揮された。相手との攻め合いや鍔競り合いにおける攻め合い・引き技、相手が仕掛けて打ってくる場面などにおいて、「主導権を握らせない」「打って出てきたとしてもかすらせない」「審判に日本選手が打たれたかもしれないと思わせるような危険な場面をつくらない」といった強い意志を感じさせた。
オーストラリアは世界大会でも2大会連続3位入賞している強豪、その力を十分に発揮し3位入賞。また、ASEAN大会(東南アジア)で優勝しているシンガポールチームも嬉しい入賞となった。


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