横浜七段戦

審判員が見た第13回全日本選抜剣道七段選手権大会 vol.1

2026年9月17日

2026.9 KENDOJIDAI

競技文化と伝統文化の妙味

豊村東盛 範士八段
とよむら・あずもり/昭和25年鹿児島県生まれ。鹿児島実業高校から中京大学に進む。卒業後、会社員を経て全日本剣道道場連盟に勤務。現在、全日本剣道道場連盟専務理事。

 剣道は「着装を見れば品が分かる。礼法・所作を見れば格が分かる。構えを見れば品格が分かる。初太刀を見れば覚悟が分かる」と小澤博先生の著書に記されていますが、今大会の感想を一言で述べるとするならば、まさにそれを体現した大会でした。

 正しく美しい着装は、相手への敬意や真剣に取り組む姿勢の表れであり、どの選手も剣道着・袴・剣道具の身に着け方が立派で品位を感じるものでした。

 また、剣道における礼法は、単なる形式ではなく、相手への感謝と尊敬の心、そして心身を統一するための重要な所作であり、一朝一夕に身に着くものではありません。平素の心がけがそのまま表現されていました。

 構えに関しては、どの選手にも隙のない美しさがあり、構えに乱れがないことは、三つの隙(構えの隙、動作の隙、心の隙)がないことを意味していると言われています。

 そして初太刀ですが、打ち切りの良さは目を見張るものがあり、打突の機会の見極めが秀逸であり、その結果が有効打突の条件を満たした、覚悟のある打突につながったのだと思います。

 本大会は全国から選抜された16人が鎬を削り合うものです。全日本剣道選手権大会等で活躍した選手ばかりであり、有効打突を決めることは容易なことではありません。16人の選手すべてが印象に残った大会でしたが、この激戦を制した小谷選手(千葉)の小手技は巧みでした。準決勝では二本連続で小手を決めましたが、このレベルで二本勝ちを収めることは容易なことではありません。

 小谷選手は出場4回、参加者では中堅クラスでしょうか。全日本剣道選手権大会2位、全国警察選手権大会2位、そして本大会前回2位と決勝戦まで進むものの、あと一歩のところで頂点を逃していましたので、なんとしても個人タイトルを獲りたかったと思います。

 一方、決勝戦で惜しくも敗れはしましたが、2位の畠中選手(東京)にも成長を感じました。世界剣道選手権大会出場、全日本剣道選手権大会3位、全国警察大会団体優勝・個人優勝と世代を代表する剣士であり、2年前の第11回大会では初出場初優勝の活躍を見せました。

 予選リーグでは最多8回出場の橋本選手(埼玉)に面を連取して1勝2分でリーグを抜けると、決勝トーナメントは1回戦で同門の林選手(東京)、大城戸選手(鹿児島)を破って決勝に進みました。前回はベスト8で敗退していますが、2回目の優勝に向けての強い決意を感じました。

 また3位には前回に続いて大城戸選手、木下選手が初めて入賞しました。大城戸選手は昨年、母校鹿屋体育大学教員に転身、剣道部監督として次世代剣士を育てることになりましたが、鹿児島でもしっかりと稽古を積んでいることが窺えました。一方、木下選手は幹部警察官として多忙な仕事をこなすなか、ベスト4に勝ち進みました。トーナメント1回戦で決めた面返し胴はまさに引き出して打つ技でした。

 全31試合を拝見して感じたことは、16選手の取り組みです。平素の稽古で目的意識をしっかりと持ち、課題解決に向けて取り組んでいることが、試合展開から感じました。

 また、審判の労をとられた先生方は試合実績も豊富で、審判経験も豊富であり、厳しい試合の連続でしたが、剣道試合・審判規則第十二条に記された「有効打突の要件・要素」をしっかりと見極め、立派な審判をしてくださりました。

 大会は、選手、審判、そして観客が一体となったとき、素晴らしい内容になると言われます。それを強く感じた大会でした。

白眉の一戦「静の林、動の畠中」

平尾 泰教士八段
ひらお・やすし/昭和42年北海道生まれ。PL学園高校から東海大学に進み、卒業後、警視庁に奉職。現在、警視庁剣道主席師範



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