2026.9 KENDOJIDAI
「出てよし、引いてよし」の小谷選手
井口 清教士八段
いぐち・きよし/昭和44年埼玉県生まれ。皆野高から流通経済大に進み、卒業後埼玉県警察に奉職。2021年に同警察を退職。現在、母校流通経済大教員。
本大会において、予選リーグは勝ち点のみならず引き分けも勝敗を左右するので選手間での駆け引きが複雑にからみあいます。
しかし、その中でも勝負をかけ、勝利を得なければ勝ち上がることができません。その意味でも、松本選手(神奈川)が緒戦でみせた二本勝ちは会場全体の目を覚ますような、素晴らしい面二本での勝利でした。大会に向けて入念に準備を重ねてきたのだろうと感じました。
今回優勝した小谷選手(千葉)と勝見選手(神奈川)の試合も目を引きました。結果的に小谷選手が二本勝ちするのですが、勝見選手も気持ちや技前で負けておらず、手数が多く見ごたえがありました。二人の持ち味が存分に出ていた印象です。
また、最年長の橋本選手も年齢を感じさせない積極的な攻め、技でした。予選リーグ突破はなりませんでしたが、3試合目、横尾選手(神奈川)に見事な跳び込み面を決めました。彼は大変ストイックな性格で出稽古やトレーニングなど努力を惜しみません。同じ埼玉の所属で彼の努力の一端を知っていますが、その成果がにじみ出た一本でした。
決勝トーナメントでもそれぞれが自分の持ち味を出そうという気持ちが出ていて、時間を感じさせないほど目の離せない試合が続きました。木下選手(香川)が松本選手に決めた面返し胴は初太刀でしたが、相手の狙いを予測した、見事な「読み勝ち」であったと思います。
結果小谷選手が勝ち上がりましたが、技が多彩で出てよし引いてよし、応じ技も上手で、それらが見事にはまっていました。畠中選手(東京)は惜しくも準優勝でしたが、剣道に勢いがあり、積極的に攻めていて、見ていて好感が持てます。林選手との同門対決(準々決勝)で決めた面からは、攻めの強さを感じました。
姿勢態度よく、体勢を崩さない剣道
寺地四幸教士八段
てらち・よつゆき/昭和44年鹿児島県生まれ。鹿児島商工(現樟南)高から警視庁に奉職する。現在、同警察剣道副主席師範。
第2試合での松本選手(神奈川)は、姿勢態度もよく、素晴らしい面を見させていただきました。一本目の面は色がなく、思い切り打ち切った面です。二本目の面も、小手をしっかり打ち切り、さらに面。見事な二段技でした。笹川選手(佐賀)も思わず見てしまったのでしょう。
私と同じ所属・警視庁の林選手も立派でした。緒戦で上段の野田選手(岐阜)と対戦しましたが、姿勢態度よく、左小手を攻めて良い機会をとらえました。
同じく警視庁の正代選手は2回目の出場でした。升田選手(大阪)との予選リーグでは初太刀、得意の面を出してその起こりに小手を打たれました。終盤に諸手突きを決めて一本を返しました。相手に攻め勝った、良い突きだったのが印象に残っています。
最年長の橋本選手(埼玉)も、最年少横尾選手(神奈川)に素晴らしい面を打っていました。体勢を崩さないで攻めながら中心をとっているからこそ、若い選手にも勝負ができるのだと思います。
畠中選手(東京)と林選手の準々決勝では、延長の末、畠中選手が起こりをとらえて面に乗りました。林選手も中盤、良く攻めて技を出す場面はありましたが、最後は畠中選手の読みが勝っていました。
その畠中選手、準決勝では大城戸選手(鹿児島)と対戦しました。大城戸選手は昨年大阪府警察を退職され、現在は鹿屋体育大学の教員です。古巣の先輩・萩原寿矢選手との準々決勝でも素晴らしい面を決めました。大阪で培った剣道を活かしながら、今年も存在感を放っていました。準決勝での畠中選手との試合も、素晴らしい試合でした。
決勝戦は小谷選手が上下に攻め、畠中選手が見てしまったところを面に乗りました。勝負勘の鋭さが活きた一本であったと感じました。
持ち味を発揮した選手が勝ち上がる
岩佐英範教士八段
いわさ・ひでのり/昭和44年、千葉県柏市生まれ。市立船橋高から東海大に進み、卒業後警視庁に奉職。現在、警視庁剣道師範。
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