剣道の技 足さばき

絶対身につけたい 左足の技術(竹中健太郎)

2021年11月15日

2021.2 KENDOJIDAI

10月の八段審査で見事、合格を手にした竹中教士。左足を継がずに打つことを基軸とし、送り足、継ぎ足の研究・工夫も続けてきた。剣道の幅を広げるために実践してきた三つの足さばきを使い分ける工夫を紹介する。

竹中健太郎(たけなか・けんたろう)教士八段

昭和47年兵庫県生まれ。PL学園高から筑波大学に進み、卒業後鳥取県高校教員となる。平成20年4月より鹿屋体育大学教員。世界剣道選手権大会個人2位、全日本剣道選手権大会ベスト8、全日本東西対抗出場、全国教職員大会個人・団体優勝、全日本選抜剣道七段選手権大会2位など。現在、同大学体育学部准教授、男子剣道部監督、第15回~18回女子日本代表コーチ。

 左足の重要性については母校PL学園ではもちろんのこと、剣道の手ほどきを受けた少年時代から指導を受けてきました。

 左足を継がずに打つことの最大のメリットは、打突動作への準備ができているため相手より速く打てることです。準備ができていれば相手より速く打てるので、その積み重ねが実戦での自信へとつながっていくと考えています。

 PL学園でお世話になった6年間は、竹刀の切っ先が少し交わった遠間から一足で打突するための左足の使い方、左足への身体の乗せ方を徹底的に繰り返し、身体にしみ込ませていただきました。稽古では打突動作に入った時、継ぎ足はもちろん少しでも左足が動けば厳しく注意を受けました。

 剣道は、気剣体一致の打突が有効打突の条件であり、それには、上半身(竹刀の振り上げ・振り下ろし)と下半身(踏み込み)のバランスがとれた動きが求められます。遠間からの打ち込みで、そのことを理屈抜きに身体に覚えさせていただいたのだと思います。

 上半身(振り上げ・振り下ろし)と下半身(踏み込み)のタイミングが気剣体一致のポイントですが、熟練度によって踏み込みと振り下ろしのタイミングに違いが出る傾向があります。初心者の場合は振り下ろしよりも踏み込みが速くなるケースが多いですが、熟練度が上がると、振り下ろしが踏み込みよりもはやくなる傾向があります。

 昨今若手の剣道選手の試合においてはこれが過度となり、打突と踏み込みに著しい時間差が見られるようになっています。いわゆる上体を大きく前傾させながら素早く打つような打突ですが、このような打ち方は、姿勢正しく打つという剣道本来の目指すべき動作から鑑みれば、発展段階ではあるものの修正が必要ではないかと考えています。その修正要素の大きな項目の一つが左足の正しい運用です。まずは打突動作に入った時、左足を動かさずに打つ技術を身に付けることがなによりも大切と考えています。相手の初動を捉えるには、左足が定まっていないと正確に打てないからです。

 ただし、剣道は間合の攻防があり、攻め合いの中で間合を詰め、自分が打てる距離に入らなければなりません。そこで必要となるのが送り足や継ぎ足などの各種足さばきです。慎重に間合のかけひきをしながら時に送り足、時に継ぎ足を使い、相手を攻めます。近年はこれらの足さばきを使って間合に入ることを心がけたことで剣道の幅が広がったと感じます。

 八段審査に臨むにあたり、攻め、打突、残心までの一連の形を動画撮影により客観的に観察し、自分の動作感覚と動画で撮影した実際の動きの「ズレ」を埋めることに努めました。

 通常の稽古相手が手数とスピードに勝る本学の大学生であり、何かと反応して構えが崩れることも多々ありました。左足が居ついたり、足幅広がりすぎたりしたこともありましたが、課題を明確にするために動画の活用は有益でした。



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