2026.10 KENDOJIDAI
撮影=西口邦彦
前年に続き、「全日本選抜剣道七段選手権大会」で堂々の3位入賞を果たした大城戸知教士。昨年、母校である鹿屋体育大学の教員・剣道部監督に就任し、身を置く環境はガラリと変わった。しかし、その激変をものともせず、最高峰の舞台で見事な結果を残してみせた。新たな挑戦のなかで、大城戸教士が特に意識しているのは「指導内容と自らの剣道を一致させること」。学生に説く理論を、自らの竹刀で体現する。言葉と技が一つになったとき、彼の剣道はさらなる高みへと進化を遂げた。指導者としての眼差しが、現役選手としての強さをまた一歩、深めている。
大城戸 知 教士七段

昨年4月、母校鹿屋体育大学の教員となり、環境が大きく変わりました。指導の対象が警察官から大学生となり、自分の剣道を高めていくことはもちろん、学生たちの主体性と個性をいかしながらどのように導いていけばよいのかを日々、前阪茂樹部長、竹中健太郎総監督と意見交換しながら実践しています。
約110名の部員の中で公式戦に出場できる選手は約1割です。試合で優秀な成績を収めることは大事ではありますが、それだけに偏ってしまうと、本学で学ぶ意味がありません。ありきたりの表現になりますが、武道としての剣道の文化的特性と競技的特性を理解すること、それらを理解したうえで、自身で実践できることが本学で剣道を修錬する大きな目的となります。
鹿屋体育大学の剣風は、仕かけが速く、機会と感じたら淀みなく打ち込んでいく特徴があります。いつでも打てる体勢をつくることが大事であり、私自身、今でもその部分は意識して稽古に取り組んでおります。
今回、七段戦に出場させていただき、3位という結果になりました。大きく環境が変わったなかで、昨年と同じ結果でありましたが、自分の中では、試合内容や技前のつくり方、「心・技」の部分ではまた違ったものがありました。教員となり、とくに意識するようになったことは「指導内容と自らの剣道を一致させること」でした。
学生たちには高いレベルの剣道を求めているのに、自分の剣道がそれとかけ離れていたら説得力がないのでは、と自分に言い聞かせています。できているか否かは第三者の評価に委ねるしかありませんが、日々、着装・礼法から常に肝に銘じて指導にあたるようにしています。
指導においては「攻めて崩す」という手順を緻密にすることを大事にしています。剣道においてスピードやパワーは大事な要素ではありますが、そればかりに頼ると自分勝手な剣道になる危険性があります。私も〝技前〟をとくに意識し、相手と構え合った際、相手に「何か」を感じさせる(伝えさせる)ことを心がけています。当然、攻め合いなので、私も「何か」を感じる(伝えられる)局面がありますが、その割合を増やすことが攻めにつながると考えています。
剣道特練を退いてからは試合の機会が格段に少なくなり、実戦で自分の力を試すことが激減しました。もちろん、それも年齢とともに当然のことですので、今の環境でできるベストを尽くすことが大事であると思います。だからこそ、いただいた機会で背伸びをせず、〝今〟の自分の力が発揮できるように、日々の稽古も緊張感をもって取り組みたいと考えています。
今後は自身の積み上げてきた実践知や経験知を実践・研究をもとに、鹿屋体育大学が推進するジャーナル・スポーツパフォーマンス研究において学術的にどう評価されるのかなどを研究していくことが求められます。その意味でやるべきことが山積みで、充実した毎日を送らせていただいています。
左手の納まりを意識して臨機応変の構えをつくる
中段の構えは、諸種の構えの基礎であり、姿勢正しく、攻防自在であることが理想です。しかし、鏡に向かって理想の構えを執ることができても、いざ相手と対峙すると自ら崩れてしまうこともあります。
充実した構えが、鋭い技につながりますが、その際、大事なのは左手の納まりと考えています。若い頃は打たれることを恐れ、危ないと感じればすぐさま手元を上げ、相手に寄りつくこともありました。相手に寄りつくことで、打突の機会を潰すことはできるかもしれませんが、自身の打突の機会も消してしまいます。それゆえ、現在は遠間で構え合い、構えをなるべく崩さずに間合を詰めていき、触刃の間合に入った段階ではすでに先をとっておくことを意識しています。
ただ、相手もおなじことを考え、間合を詰めてきます。崩さないことばかりを考えると居つきにつながる恐れもあり、遠山の目付を意識して相手を観察し、いつでも対応できるように心がけています。
礼法から気持ちを充実させて相手と対峙する
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