自分で作る道 連載

道場の成長(クリストファー E・J ヤング)

2021年1月3日
無料記事

Pocket


道場の成長

*この記事はコロナの影響で剣道道場が中止になる前に書きました。
第一回はこちら
第二回はこちら
第三回はこちら
第四回はこちら

2018年6月8日。これはプラノ剣道道場の最初の稽古の日でした。当初、私たちは週に1回、金曜の午後の稽古を予定していました。午後3:45から5:00までは子供クラス、5:00-6:15までは大人クラスです。私たちは7人の子供と21人の大人、合計29人の剣士で道場を始めました。ほとんどの剣士が、剣道を初めて習う未経験者です。

剣道の基本に立ち返り教えることは私にとってとても勉強になりました。トーランス道場や他の道場と異なり、ここには「ロールモデル」やお手本はありません。剣道や日本の文化に触れたことがない人たちにとって、剣道は完全に新しい概念です。このため、剣道の礼儀作法やマナー、挨拶など、全て説明し、教えなければなりません。

実際の剣道の稽古に加えて、少しずつですが「道」や剣の道についての説明も試みました。剣道は身体の健康だけではなく、精神の規律を達成するためのものでもあります。剣道の素晴らしさはメダルや段位ではなく、たゆまぬ「道」の追求によって自分の心と人格がいかに形成され、磨かれていくことであると説きました。

プラノ剣道道場の最初の稽古の日から18ヶ月後、私たちは週に二回、金曜日と土曜日の夕方に稽古をしています。そして、4つの異なるクラスがあります。子供初心者、子供経験者、大人初心者、大人経験者クラスです。24人の子供、46人の大人、合計70人の剣士が所属します。設立2年目を迎え、これからも成長していきたいと思っています。

剣友ーー剣道を通じた友情

新しい道場を開始する全てのプロセスは、とても謙虚で、そして勇気と努力が必要でした。この一連のプロセスを通して私が実感したことは、世界中の多くの剣友たちからの励ましやサポートなくしてはできなかったということです。

前述したように、トーランス道場の良き剣友たちがWebサイトや美しいロゴを作ってくれました。リニューアルしたWebサイトは、私たちの道場に所属するキジャナ・ウッダードという剣士が担当しました。彼はダラスでIT企業を経営しています。私の剣友であり全日本武道具代表のTakahiko Kawabeさんは私が道場を設立すると知り、50本もの新品の竹刀を「励ましの贈り物」として送ってくれました。私たちは50人の新しい剣士たちにこの竹刀を渡しました。さらに、「プラノ道場特別価格」で全ての道具を剣士たちに提供してくれたんです。KendoStarの代表であり、元イギリス代表キャプテンのアンディーフィッシャーさんも、防具セット、袴、稽古着を特別価格で私たちの新しい道場のために提供してくれました。

この1年半の間に、多くの剣友が時間とお金をかけて道場を訪れ、剣道を指導してくれました。アメリカ代表メンバーのほとんどが、秋の剣道セミナーの指導、道場内大会で審判の審判、そして初めての道場級審査のためにきてくれました。また、有段者がほとんどいない私たちの道場のために、トーランス道場からも多くの先生方が教えにきてくださいました。

直近は、私のメンターであり先生の黒木貞光先生が道場を訪れプラノ剣道道場の剣士に向けてセミナーを開催してくださいました。また、黒木先生が、剣友・書道家のTanaka Taizanさんを紹介してくださって、私たちが道場で使用する最初の作品が出来上がりました。

新しい道場ではありますが、改めて剣道を通した友情の素晴らしさを実感しました。そして、私たちの道場のモットーを「剣友」にすることにしました。これからも若い道場が成長を続けていくなかで、多くの剣友や先生に恵まれ、アメリカでも有数の剣道道場になることを願っています。 

クリストファー E・J ヤング

1978年8月生まれ。トーランス剣道道場にて剣道を8歳で始める。カリフォルニア大学バークレー校(2000)とジョージタウン・ロースクール(2003)卒業。大学時代は筑波大学に留学し、筑波大剣道部入部。現在は北米トヨタ自動車のVice President、北米トヨタコネクテッドのGeneral Counsel. 世界剣道選手権大会には1997年(京都開幕)で初出場、2015年に開幕された16回世界大会まで7大会連続で出場、団体戦二位(2回)・三位(3回)・個人戦ベスト8(2回)・敢闘賞(7回)を記録した。剣道教士七段。

翻訳 = 佐藤まり子

You Might Also Like

No Comments

Leave a Reply